公開日:2026年10月14日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
個別指導塾をフランチャイジーとして運営する株式会社YZコンサルティングでは、校舎・社員の間で発生する業務品質のバラつきの防止、運営校舎のマネジメント状態の管理、本社部門との業務連携、校舎・ブロック・会社全体といった段階ごとの集計情報を分析し状況把握や意思決定を行う基盤としてkintoneを活用している。同社では、問い合わせ管理、生徒管理、成績管理、面談記録、勤怠管理、営業日報、業務依頼など、塾運営に関わる幅広い業務をkintone上で管理している。kintoneとkrewシリーズをどのように活用し、学習塾運営のマネジメントを変えてきたのか。取締役 副社長 吉田 尚史氏にお話を伺った。
課題
学習塾運営に欠かせないマネジメント。何も生み出さない“集計作業”を自動化したい
全国展開する大手個別指導塾のフランチャイジー企業として、埼玉県を中心に群馬県、栃木県、茨城県、千葉県で学習塾事業を展開する株式会社YZコンサルティング。現在は約3,000名の小学生・中学生・高校生が在籍しており、60名を超えるスタッフが日々の教室運営に携わっている。教室長をはじめとした講師陣が質の高い授業を提供し、積極的なコミュニケーションを通じて生徒が希望する進路実現に向けて可能性を最大限引き出すことで、“なりたい自分になってほしい”という教育方針を掲げている。
同社は2010年に創業し現在では運営校舎を47校に増やし事業を拡大してきた。事業規模を拡大していく中では、拠点や社員が増えていくことによる業務品質のバラつきの発生、管理工数の増大、状況把握や意思決定に必要なデータ集計作業の煩雑化などの課題が予想された。そういった課題を解消していくため、業務品質のバラつきを防止しつつ複数校舎を横断管理し様々なKPI指標をスムーズに割り出せるシステムが必要だと考えた。
創業初期は、例えば5校舎分の情報をまとめて見たい場合、校舎ごとに個別に情報を確認しExcelで集計していた。問い合わせや出欠席、成績や定期面談の管理方法が校舎ごとに異なっていたり、集客状況や季節講習などの販売状況をリアルタイムで正確に把握し分析することが難しかったりしていた。とはいえ、予算など様々なKPI指標を達成し事業を拡大していくためには、早く正確な情報把握やデータ集計、品質管理は欠かせない。
「システムに登録された情報を集約し、一気通貫で活用したいと考えていました。Excelで管理しようとしても、社員ごとにExcel知識や入力精度のばらつきがあります。入力や集計の方法、使用する書式が人によって変わると、管理の品質にも差が出てしまいます。集計や管理にかかる作業時間もばかになりません。校舎を増やしていくなかで、システムとして統一した方法で管理していける環境整備が必要だったのです」と吉田氏は当時を振り返る。

同社が避けたかったのは、教室長に本来の業務以外の集計作業を負担させることだった。教室長は生徒や保護者への対応、講師のマネジメント、授業品質の維持など、日々多くの業務を担っている。そこに、経営判断のための集計作業まで依頼すれば、現場の負担が増える。
「集計した数値には価値があります。経営判断や分析に使えるからです。ただ、その数値を出すまでの作業そのものは、何も生み出しません。そこをできるだけなくしたいと考えていました」
必要だったのは、社員のExcelスキルに依存せず、同じルールで入力された情報を自動的に集計し、必要な人が必要な形で確認できる仕組みだった。

選定
サイボウズ Officeからkintone+krewシリーズへ。決め手は「現場で使える管理基盤」を自分たちで作れること
kintone導入前、同社ではサイボウズ Officeのカスタムアプリ機能を使い、問い合わせ管理などの業務アプリを作成していた。きっかけは、サイボウズ Officeを前職で利用していた事業部長が入社したことだった。最初は問い合わせ管理から始まり、生徒情報や履修状況など、教室運営に必要な情報も徐々に管理するようになった。
ただし、数年間運用する中で限界も見えてきた。サイボウズ Officeでは、1つのアプリ内での管理はできても、複数アプリにまたがる情報をまとめて集計するには手作業が残った。アプリ間のデータをつなげて分析したい場合、結局はExcelに出力し、再入力や加工を行う必要があった。
「複数のアプリに分かれた情報を一発で集計したかったのですが、そこは手作業が必要でした。画面の見やすさや、データの加工のしやすさにも課題を感じていました」
そこで吉田氏が検討したのが、kintoneとkrewシリーズだった。kintoneは、業務に合わせてアプリを作成できるノーコード・ローコードツールであり、プログラミングの専門知識がなくても、現場業務に合わせた仕組みを作りやすい。吉田氏自身はもともとIT専門職ではなく、過去に本格的なシステム構築を経験したことはなかった。ExcelやDropboxで情報を共有するところからスタートし、そこから学びながら社内の業務基盤を整備してきたという。
「システムを整備したほうが、結果的に人件費の抑制にもつながると考えました。管理の仕組みが整っていれば、経験が浅い人でも一定の品質で業務を進めやすくなります」
さらに、サイボウズ Officeで感じていた「複数のアプリに分かれた情報を集計する」という課題や、見やすい画面を社員に提供するという観点から、kintoneプラグインのkrewシリーズに注目した。
krewシリーズは、kintoneのデータをExcelのような表形式で表示・編集できるkrewSheet、複数アプリのデータを集計したり、条件に応じてレコードを作成したりするkrewData、kintone内のデータをグラフや表で可視化し、経営会議やマネジメントに使いやすい形で表示できるkrewDashboardというラインアップを持つkintoneプラグインである。
「実は、サイボウズに相談してやりたいことを伝えたとき、おすすめプラグインとしてkrewシリーズを紹介されたのです。プラグインをうまく使うことで、自動化や省力化がより進むのではと考えました」と吉田氏。
導入は段階的に進めた。まず、kintone導入と同じタイミングでkrewSheetを導入した。Excelに慣れた社員が使いやすい画面にするためだ。次に、各アプリへデータが蓄積されてきたタイミングでkrewDashboardを導入した。校舎別、エリア別、全社別に状況を見える化するためである。最後に導入したのがkrewDataだった。複数アプリの情報を集計したり、定期的に必要なレコードを自動作成したりすることで、手作業をさらに減らすためだった。
効果
集計に追われる管理から、データを見て先手を打つ管理へ
現在は、60名を超えるスタッフ全員にkintoneアカウントを付与しており、生徒や施設、社員情報などのマスターアプリをはじめ、問い合わせ情報を集約する見込み管理や、営業日報、タスク管理、各施設へ情報を伝える通達、業務依頼、ファイル管理といった100を超えるアプリを使って日々の業務に生かしている。
これらのアプリの多くにkrewSheetを適用し、一覧で見やすく、入力しやすい画面を整えている。ITに詳しい担当者だけが使える仕組みではなく、教室長やスタッフが日常業務の中で迷わず入力できることを重視した設計だ。それでは、具体的な活用方法を見てみよう。
■営業日報
営業日報では、各教室が日々の業務報告やコメント、清掃などのルーチン業務の状況を入力する。画面左側にはkrewSheetの一覧を表示し、右側には選択したレコードの詳細をサブウィンドウで表示する。さらに、問い合わせ状況、生徒数の推移、入会に関する予実状況など、別のアプリで管理している情報も営業日報に紐づけて表示する。教室長は日報を入力しながら、自校舎の状況を同じ画面上で確認できる。
「教室長は日々のルーチンワークを記録しながら、入会状況など日々把握しておくべき情報も確認できます。必要な情報が自動的に更新されるので、別々の資料を探しに行く手間が減りました」と吉田氏は説明する。

▲krewSheetのサブウィンドウを活用した営業日報
以前は、教室ごとの状況確認や日報、問い合わせ状況、入会状況が別々に管理され、必要な情報を集めるだけで時間がかかっていたが、現在では、日報画面を起点に関連情報をまとめて確認できるようになり、教室長が日々の状況を把握しやすくなったという。約3,000名の生徒と複数県にまたがる教室を運営する同社にとって、現場が日々の状況を迷わず入力・確認できることは、教室ごとの品質をそろえるうえで大きな意味を持つといえる。
■問い合わせから入会までを見える化する見込み管理
学習塾にとって、問い合わせは重要な経営指標のひとつである。電話やWebサイトから寄せられる問い合わせが、資料送付、説明会、体験授業、入塾へとどう進んでいるかを把握することで、入会希望者のニーズをくみ取ることが可能となる。
そこで、電話やWebサイトから寄せられた各種問い合わせを、krewSheetを適用した見込み管理アプリに登録し、資料送付、説明会、体験授業、入会、長期フォローといったステータスを管理するようにした。
各教室は、問い合わせごとに現在の進捗を更新する。上長は、その内容を確認し、必要に応じてフィードバックを残す。これにより、問い合わせから入会までの対応履歴が一元管理される。さらに、krewDataを使い、見込み管理アプリのデータを校舎別・期間別に集計する。その結果をkrewSheetのXrossモードで表示することで、月ごとの問い合わせ件数、来校状況、入会状況などを表形式で確認できる。Xrossモードとは、集計したい項目を縦軸・横軸に置き、ピボットテーブルのように件数や割合を確認できる表示方法である。加えて、krewDashboardでは問い合わせ管理アプリのデータをグラフ化している。全社データをベースにしながら、スライサーと呼ばれる絞り込み機能で校舎やエリアを切り替えられるため、エリアマネージャーとのミーティングで状況を確認しやすい。

▲ krewDashboardの見込み管理画面
吉田氏は「以前は会議の場で、まず校舎の状況確認から始める必要がありました。今はダッシュボードを見れば現状がすぐに分かるので、具体的な対応策の議論に入りやすくなっています」とkrewDashboardの効果を話す。
以前は問い合わせ数や入会までの進捗を確認するために、教室ごとの情報を集めて整理する必要があり、会議の前提となる状況把握に時間がかかっていたが、現在は問い合わせから入会までの流れが表とダッシュボードで可視化され、会議では「何が起きているか」ではなく「次に何をするか」を議論できるようになったそうだ。
■生徒マスターを起点に、成績・面談・模試結果を1画面で確認
学習塾ならではの活用として、生徒マスターアプリがある。現場では、生徒一人ひとりの状況を正確に把握することが欠かせない。定期テストの成績、模試結果、出席状況、面談内容、季節講習の提案内容など、必要な情報は多い。導入前は、これらの情報が複数のアプリや帳票に分かれていた。そのため、面談前に生徒の状況を確認するには、必要な情報を個別に探す必要があった。
生徒マスターアプリでは、生徒ごとの基本情報を登録している。各生徒にはIDを持たせ、そのIDを使ってkintoneの関連レコード機能で成績管理、出席管理、面談記録、模試結果などの関連情報をひもづけている。krewSheetでは、関連情報を画面の下部に表示することが可能だ。生徒マスターアプリ上で生徒のレコードを選択すると、関連情報としてひもづけられた定期テストの成績、模試結果、面談履歴などを同じ画面で確認できる。これにより、生徒や保護者との面談前に複数の資料を探し回る必要がなくなった。学習状況や過去の面談内容を踏まえて、より具体的な提案や指導がしやすくなっている。
以前は、生徒に関する情報が複数の資料やアプリに分散し、面談前に必要な情報を集める手間があったが、今では生徒マスターを起点に関連情報を1画面で確認でき、面談準備や学習状況の把握が効率化された。
「生徒マスターを見れば、定期テストや模試の結果、面談に必要な情報を確認できます。生徒IDで情報をひもづけているので、必要な情報をまとめて見られるようになりました」と吉田氏は言う。
生徒一人ひとりへの伴走を重視する学習塾にとって、成績や面談履歴をすぐ確認できることは、指導品質の均質化と保護者対応の質向上に直結する。

▲krewSheetを適用した生徒マスター
■krewDataで面談・テスト・講習の入力用レコードを自動作成
学習塾では、定期テスト、季節講習、面談など、生徒ごとに定期的な記録が発生する。たとえば一学期の中間テスト後には、数百人分の成績入力が必要になる。季節講習前には、生徒ごとの面談記録や提案内容も管理しなければならない。導入前は、こうした記録を入力する前に、まず生徒数分の入力用レコードを作成する必要があった。この作業は単純だが、人数が多いほど時間がかかる。このレコードを自動作成する場面でkrewDataが活躍している。
生徒マスターから対象となる生徒を抽出し、定期テストや面談、講習など、目的に応じた入力用レコードを作成するというデータ編集フローである。教室長やスタッフは、あらかじめ用意されたレコードに結果や面談内容を入力するだけでよい。
面談やテストのたびに入力用レコードを手作業で作成する必要があり、準備作業に時間がかかっていたが、krewDataで対象者分のレコードを自動作成できるため、現場はテスト結果の分析やコメントの入力に集中できるとのこと。生徒数が約3,000名規模になると、ひとつの作業を数分短縮するだけでも全体では大きな時間削減になる。入力準備を自動化したことで、スタッフが生徒と向き合う時間を確保しやすくなった。
吉田氏も「一学期の中間テストの成績を数百人分入力する場合でも、定期テストのアプリに生徒数分の空レコードを出力しておけば、教室長は成績だけを入力できます。手動でレコードを作る時間を削減できたことは大きいです」とその効果を語る。

▲krewDataで面談やテスト情報の入力用レコードを自動生成する処理のイメージ
■アルバイト講師約500名の勤怠をkintoneで管理し、会計事務所との連携も効率化
勤怠管理でもkrewSheetが活用されている。社員の勤怠はマネーフォワードクラウド勤怠を利用し、そのデータをkintoneに取り込んで管理している。一方、アルバイト講師の勤怠はkintone上で管理している。対象となるアルバイト講師は約500名にのぼるそうである。
各教室長は、自校舎のアルバイト講師の勤怠情報をkintoneに入力する。krewSheetでは、会計事務所が処理しやすい項目順や形式に合わせて一覧画面を設計している。入力内容をもとにコマ給計算を行い、必要なデータをエクスポートして会計事務所に送る。API連携のような自動接続は行っていないが、会計事務所側のテンプレートに合わせた形式をkrewSheetで整えているため、kintoneから出力したファイルをそのまま処理に回しやすい。
「以前は、数百人いるアルバイト講師の勤怠ファイルを一つずつ開いて、会計事務所に入力してもらっていました。今はkintoneから必要な形でエクスポートできるため、かなりの労働時間削減につながっているはずです」と吉田氏。
約500名のアルバイト講師を抱える同社にとって、勤怠データの標準化は労務管理の効率化だけでなく、人件費の見える化にもつながる。実際に、勤務実績や担当状況を把握しやすくなったことで、年間約1,000万円規模の経費削減にも貢献している。
効果
集計に追われる管理から、データを見て先手を打つ管理へ
kintoneとkrewシリーズの活用により、YZコンサルティングでは、各校舎の状況をリアルタイムに近い形で把握できるようになった。問い合わせ数、生徒数、面談状況、成績、勤怠、人件費に関わる情報など、校舎運営に必要なデータがkintone上に蓄積され、krewSheetやkrewDashboardを通じて見やすく整理されている。
導入前は必要な情報を集めるところから始めなければならなかったが、導入後はすでに集計・可視化された情報を見ながら、次に何をすべきかを考えられるようになった。
「期初に立てた予算との差が大きくなる前に、打ち手を検討できるようになりました。ワンテンポ対応が早くなった印象です」
データが見えるようになったことで、現場の意識にも変化が生まれている。数字が共有され、各校舎や全社の状況が明らかになることで、予算に対する認識が変わり、経営的な達成率も上がってきているという。
集計や入力準備にかかる負担も大きく軽減された。krewシリーズによって、きめ細かな情報を管理しながらも、集計・入力の負担を抑える体制を整えている。管理コストについても、従来と比べて大幅に圧縮でき、1人で従来の複数人分に相当する管理業務を担える状態に近づいているとのこと。
「労働時間の削減や管理強化には、間違いなくつながっています。データ加工もしやすく、現場にとっても使いやすい仕組みになっています」と吉田氏。

■生成AIとの連携で人的マネジメントにリソースが確保できる環境づくりを目指す
今後については、すでに運用しているアプリの機能改善はもちろん、蓄積されたデータの組み合わせが十分でない部分も残っており、これまで以上にスマートなワークフローを整備していきたいという。
「組織的に管理者が多くなると収益率も落ちてくるため、基本的には教室長をメインに運営していきながら、さらにマネジメントが効くシステムを作っていきたい」と吉田氏は意欲的だ。ただし、現在は吉田氏がkintoneのアプリ開発を一手に担っていることでの属人化が懸念材料の1つになっているという。
「技術を持ったメンバーが増えることはいいことですが、標準がぶれてしまう懸念もあります。その辺りも勘案しながら、開発できる人材の育成に取り組んでいきたい」と吉田氏。
また、新たな環境整備についても取り組んでいる状況で、MCPを使ってClaudeなどの生成AIとkintoneとの連携を図り、データの加工や傾向分析を含めて自動的にフィードバックできるような環境をすでに模索し始めているという。
「データを見て分析していくだけでも時間がかかりますし、事業拡大のなかで新人が増えており、フィードバックするだけでも大変です。定型的な管理業務をAIへ代替し、捻出された時間を、人間にしかできない対人マネジメントや生徒への伴走に充てていきたい」と、今後について吉田氏に語っていただいた。


