公開日:2026年x月x日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
法人向けのデバイスレンタルを中心に事業を展開している株式会社SSマーケットでは、コロナ禍において事業が大きく拡大するなかで、Excelをはじめとしたスプレッドシートでカバーしていた基幹システムの周辺業務の基盤を整備すべくkintoneを導入。複数アプリの情報を集約・統合して業務の可視化を進めるためのプラグインとしてkrewDataを中心としたkrewシリーズを活用している。その経緯について、IT統括部 部長 金 泰源氏および同部 ITイノベーション課 藤﨑 杏子氏、事業推進部 業務推進課 大東 佳苗氏にお話を伺った。
課題
担当者の数だけスプレッドシートが乱立、情報基盤の整備が必要に
2012年に設立し、パソコンを中心に各種デバイスのレンタル事業を手掛けている株式会社SSマーケット。「新たな価値を、共に生み出すパートナー」をパーパスに、すべての仕事に目的を持ちワクワクを創造する「おもしろく、やる」をコアバリューに掲げ、八王子本社とともに、熊本や大阪、福岡、山梨など複数の支店を展開しながら全国の顧客にデバイスレンタルを行っている。
イベント開催時に必要な短期間でのスポットレンタルをはじめ、キッティング込みでの即日出荷など、顧客の期待に応えるためのきめ細やかなサービスを展開。さらに、ライフサイクル管理も含めたIT運用管理が可能なLCMサービスも提供している。ニーズに合わせてレンタル可能なデバイスの種類を豊富に取り揃えており、Wi-Fiルーターやペンタブレット、オフィス什器など、自社で保有するレンタル可能なデバイス在庫数は18万台を超えている。
そんな同社が手掛けるデバイスレンタル事業では、以前からレンタル事業向けの汎用的な基幹システムを利用して業務管理を行っていた。顧客の要望に応える付帯サービスや在庫管理など、基幹システムで 管理できない周辺業務については、ExcelやGoogleスプレッドシートなどを駆使して日々の業務を遂行していた経緯がある。
「コロナ禍で事業が一気にスケールするなか、部署を超えた情報連携の不備や業務の属人化など従来の環境では業務に支障が出る場面がありました。私がジョインしたタイミングで、全社的な業務基盤を整備する必要があると痛感したのです」と金氏は当時を振り返る。

「担当者の数だけスプレッドシートが存在していて、どこに何の情報があるのか分かりづらい状況が続いていました。情報を一元管理したうえで“ここを見れば解決できる”という環境が現場からも求められていたのです」と藤﨑氏も当時の課題について語る。
kintoneに触れる機会が訪れたのは、金氏がセキュリティやガバナンスにも配慮しながら部署間の業務連携や外部サービスとのデータ連携が可能な環境構築を検討する過程での役員の助言だったという。
「kintoneはアプリのなかに自由に項目を設けて情報を管理できること、ユーザーのアクセス権限をレコード単位や項目単位などきめ細かく制御できることが大きな魅力でした。APIも拡充されていて他システムとの連携が容易で、業務フローに沿った基盤を素早く構築するにはうってつけだと考えたのです」と金氏。


選定
分析基盤がノーコードで実装可能、kintone活用に欠かせないkrewシリーズ
kintone導入後、kintoneでの業務基盤整備を念頭に検討を進めるなかで、当初から目をつけていたプラグインがkrewシリーズだった。
「krewシリーズはアプリをまたいだデータの集計やダッシュボードが簡単にできそうでしたので、kintoneを本格的な業務基盤として活用するのに適したプラグインだと思いました。そのため、社内稟議の段階でkrewシリーズの導入も含めて予算を申請しました」と金氏。無償で利用できるプラグインも視野に入れていたものの、サービス終了のリスクやサポートの観点で有償プラグインを前提に検討を重ねたという。
krewシリーズのなかで、最も注目したのは、アプリ間の情報を集約して別アプリに展開できるkrewDataだった。
「AWSを活用しながらETLやDWHなどを構築した経験がある私にとって、ノーコードでBI的なデータ加工ができるkrewDataはとても刺さりました。多少のITリテラシーは必要ですが、開発未経験のメンバーでも同じようなことが実現できます。さらに、データ加工後の可視化用途としてkrewDashboardもありkrewシリーズは早い段階から導入しようと決めていたのです」と金氏。Excelライクな使い方が可能なkrewSheetについても、UXの観点から現場に展開する際にメリットが大きいと判断。
藤﨑氏も「krewシリーズなら私のように開発経験がなくとも扱えそうだと直感しました」と導入当時の印象を語る。開発未経験の藤﨑氏の「扱えそう」という判断から、いずれは現場のメンバーが自分たちの業務にフィットしたアプリを開発していけるようになるだろうと金氏は考えたという。
こうして、kintoneによる業務基盤づくりに欠かせないプラグインとして、krewシリーズが選択された。
効果
kintone活用を加速させるkrewシリーズ
krewDataを中心にkintoneへの情報集約が進み、業務効率化に貢献
現在は150名ほどの全社員がkintoneを活用して日々の業務を行っており、100ほどのアプリが実業務に生かされている。プラグインについては、krewシリーズをはじめ、他にもいくつかのプラグインを導入している。
「krewシリーズのほか著名なプラグインは当初から導入しています。プラグインはkintoneの活用の幅を広げるのに欠かせない存在で実現したい機能をスムーズに実装できます」と金氏は説明する。
主なkintoneアプリとしては、稟議申請などのアプリをはじめ、見積作成や請求管理などの販売管理、仕入れなどの購買管理、CRMとしての顧客管理、WMS含めた在庫管理など、レンタル事業を運営するために欠かせない業務プロセスに沿ったアプリをkintoneで網羅している。また、契約情報をもとに領収書や納品書を作成するといった帳票系のアプリも用意している。
「特にレンタル事業では商品の出荷や返却などのプロセス情報を細かく管理する必要があり、移動の履歴を追いかけるためのアプリが多数存在しています」と藤﨑氏は語る。
krewDataについては、アプリからデータを抽出して別アプリを更新するフローをスケジュール実行を中心に運用している。例えば、基幹システムでは計算できなかったレンタルデバイス(商品)の減価償却費の算出のフローでは、デバイスの入荷日や購入日をkrewDataで更新しkintoneの計算フィールドで減価償却費を自動計算している。前述のとおり18万台もの商品を在庫として管理している同社にとって、デバイスごとの減価償却費の自動計算は業務の効率化に貢献しているといえる。
また、krewDataではkintoneの情報をGoogleドライブに展開するというフローもよく利用しているという。これは、レンタルしたデバイスの管理番号や配送伝票の情報を商品出荷時に情報共有して欲しいという顧客の要望に応えたものである。個体情報や配送会社の伝票情報、契約情報などの情報をアプリから集約し、Googleドライブに出力するところまでをkrewDataが担っている。出力されたデータを各営業担当が状況に応じて顧客にスプレッドシートで共有しているという。

▲個体番号、契約や伝票からの情報を集約しGoogleドライブに出力するkrewDataのデータ編集フロー図
「お客さまが管理するGoogleドライブへの直接アクセスはセキュリティ上の懸念があり、一旦営業担当者を介してお客さまに情報提供しています」と金氏は説明する。以前は手作業で情報を集めて整理したうえで顧客に通知していた業務だが、データ作成までの手間が大幅に削減できた業務改善の好例となっている。

逆に、Googleドライブの情報をkintoneに取り込むフローもkrewDataで実現しており、こちらは活用のポテンシャルが特に高い仕組みだ。
同社の在庫資産を活用してレンタルビジネスを展開するパートナー企業の案件情報をkintoneに自動的に取り込むという使い方で、まず、パートナー企業側が管理するクラウドストレージに出荷内容(どの企業にどのデバイスを、いつ何処に送るのかなど)の情報を投入してもらう。そのデータをSSマーケットが管理するGoogleドライブに連携。krewDataのスケジュール実行により日次でkintoneの案件アプリ・商品アプリ・納品先アプリに情報を自動登録している。
以前はメールやチャットで届く案件情報を担当者が手作業でシステムに入力しており、入力漏れやタイムラグが課題となっていたが、この仕組みにより正確かつリアルタイムに近い案件管理が可能になったという。パートナー企業経由で最終的な顧客に対して貸し出したデバイスの管理を同社がkintone上で一元的に実施できるようになったことで、レンタルビジネスの幅が広がった好例であり、顧客の多様なニーズに応える同社ならではの柔軟な仕組みだ。
krewSheetについては現場の作業負担の軽減に役立っている。1例として、請求管理では営業担当者が顧客との契約情報を更新するマスターアプリから請求書の作成が必要な案件をkrewDataで抽出し、毎月作業用アプリとして展開している。この作業用アプリで営業が必要情報を確認するのだが、以前はレコードを1件ずつ開いて詳細情報を確認する必要があり、請求項目が多い顧客ほど作業負荷が大きかった。krewSheetを導入したことでExcelライクな一覧表示が可能になり、レコードをそれぞれ展開せずとも詳細情報がひと目で確認できるようになった。krewSheetの関連レコード上で作業の履歴管理も行っており、現場のUI浸透にも効果的だ。

▲krewSheetが適用された請求書の内容を確認する作業画面。画面遷移せずに確認できる
krewDashboardについては、デバイスの種別や在庫情報を管理する商品マスターアプリの各詳細レコードなかに組み込み、デバイスが現在倉庫内のどこの棚番にどれくらい保管されているのか把握できるよう、在庫状況の可視化を行っている。以前は在庫状況の確認に倉庫担当者への電話確認やExcel台帳の検索が必要で、営業担当者がリアルタイムに把握することが難しかった。

▲商品マスターの詳細レコードにkrewDashboardを埋め込み、在庫場所と貸し出し状況を可視化
「営業目線で言えば、引き合いがあった段階でどのくらいその種別の商品があるのかすぐに把握できますし、倉庫担当者は物理的にどのロケーションに何台あるのかがアプリを見るだけで把握できます。それぞれの部署にとって役立っているアプリといえます」と金氏。
krewDashboardは業務の可視化に加え社内文化の醸成にも一役買っている。その使い方の1つが、kintone上で用意しているデジタル版サンクスカードアプリ、通称(ありつた:’ありがとうを伝えたくて’の略)である。ありつたは、ありがとうという感謝の気持ちを気軽に伝えることで、良質なコミュニケーションを促進させる目的で作成されたアプリだが、その利用履歴を従業員マスターと連携させ、どれだけの感謝が送られているのかをkrewDashboardで可視化している。
「面白いことをやっていこう!という社風なため、いろいろなプロジェクトが立ち上がってきますが、その1つがこのありつたプロジェクトです。従業員同士の感謝が飛び交っている状況をkrewDashboardで見える化しているわけです」と金氏。
なお、ありつたの活用状況はあくまで社内コミュニケーションの活性化を目的としたものであり、人事考課には一切使用していない。自由闊達な社風を育むためのツールとして位置づけている点も同社らしいこだわりだ。
kintone標準では対応できない処理が実現できるkrewシリーズを高く評価
krewシリーズについては、kintone標準では対応できない処理が可能なため、非常に重宝していると高く評価する。「おもしろく、やる」をコアバリューに掲げる同社にとって、新しいアイデアを素早く形にできるkrewシリーズの柔軟性は大きな武器だ。
「krewDataはアプリ横断でさまざまなデータ活用ができるところや、クラウドストレージに接続できる外部ファイル入出力機能は、いろんなデータを活用する現代のビジネスにマッチしていて素晴らしいと思います。そして、krewSheetはExcelの操作性を好むユーザーに対してkintoneの定着や普及を容易にしてくれます。また、単なる数字ではわかりづらいものも、krewDashboardのおかげで現場での迅速な判断につながっています」と金氏。
特にkrewDataのGoogleドライブやMicrosoft SharePointなどの外部サービスとの連携は、SaaSが広く利用されている今だからこそアイデア次第でさまざまな用途への展開が期待できるという。
大東氏も現場の視点からkrewシリーズに対してこのように評価する。
「krewDashboardで実現したデバイスごとの在庫の可視化が良い例ですが、情報を探したり確認したりする時間が削減されて現場の判断がしやすく作業時間が圧倒的に短くなっています。あと、なんでも面白くやろうという社風なので、いろんなプロジェクトがたくさん立ち上がるのですが、krewDashboardで可視化してあると、過去にどういうデータを集めたのか、似たようなプロジェクトはなかったかなどの判断がしやすくなりました。krewDataについては再現性のある計算が自動的に行われるため、ヒューマンエラーもなくなりました」

前述した、レンタルしたデバイスの管理番号や配送伝票の情報を商品出荷時に顧客に共有する業務では、手作業で1件あたり数分を要していたため月間では数時間に及ぶ作業が発生していたが、krewDataの導入後は月全体の処理がわずか数分で完了、スプレッドシートの利用も以前と比べて半減するなど、定量的な効果も得られている。
「以前は気合いや勢いで作業していたことが多かったですが、kintoneにデータが蓄積されたことで必要な数字がすぐに可視化できます。何かあればkintoneを使ってデータを貯めていこうという思考に全社員がなっていることも大きな効果です」と藤﨑氏。
また、藤﨑氏は使い勝手の面でも「krewDataはアイコンをドラッグ&ドロップで操作しながらサクッとフローが設定できるので、開発未経験でも心理的なハードルが下がり頭を整理しながら開発していける。楽しさを覚えることもあって自分の価値観がアップデートされる気がします」と好評だ。
結果として、メンバーの数は増やさずに売上が1.2倍になるなど、kintoneやkrewシリーズによる業務効率化が事業に対して貢献していることは間違いないと金氏は言う。

運用管理を手掛けるLCM事業への展開含め、krewシリーズの機能拡張に期待
デバイスレンタル事業の業務に必要なアプリはほぼ開発済みで、現在は改善を繰り返しながら活用している段階にあるそうだ。今後もkintoneやkrewシリーズをうまく活用して、市場や事業の変化に柔軟に対応していきたいという。
「オフィスのパソコン調達、構築、保守、撤去までを手掛けるLCM事業においても営業部門から業務基盤の整備に関する多くの声が寄せられています。細かなお客さまのニーズに応えていくことが我々の特徴だけに、LCMの領域はフォーマット化が難しいのですが、うまく業務をkintoneに落としていくことで、業務の自動化や効率化を進めていきたい」と藤﨑氏は意欲的だ。
krewシリーズについては、さらなる機能拡充含めて、今後のアップデートに対する期待は高い。「kintoneを利用する企業が増えていることもあり、企業間コラボみたいなオファーが増えていくのではと考えています。krewシリーズについては、kintoneのETL的なプラグインとして他の追随を許さないようなアップデートが盛んになることを望んでいます。生成AIなどの機能もうまく取り込んでいただけると嬉しい」と今後について金氏に語っていただいた。


