導入事例

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業種:その他

部署:強化部

利用用途:助成金申請・承認管理

使用製品:krewSheet / krewData

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事例公開日:2025年6月2日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

日本パラスポーツ協会が導入、全国150団体・300名が利用する
業務基盤をkintoneとkrewで実現

指導者育成や選手の競技力向上など各種パラスポーツに関連した支援を行っている公益財団法人日本パラスポーツ協会では、Excelを活用して競技団体や指導者、選手に係る団体情報などのマスター管理や強化費に関連した申請承認のプロセス、予算の執行状況管理を行ってきたが、協会職員や競技団体のスタッフの情報基盤として活用できるプラットフォームにkintoneを採用。アプリ間の情報連携や各種集計業務の自動化、現場展開を容易に実現するためのプラグインとしてkrewシリーズを導入した。その経緯について、強化部 強化支援課 伏見 みずき氏および情報科学スタッフとして参画している林 雄次氏にお話を伺った。

【課題】導入済みのkintoneを有効活用、マスター整備や強化費関連の業務基盤整備に着手

障がい者のスポーツの普及拡大を目指したパラスポーツ振興を目的に、さまざまな事業を推進している公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)。障がい者の地域におけるスポーツ活動の普及振興をはじめ、全国障害者スポーツ大会やジャパンパラ競技大会の主催、パラスポーツ指導者の育成、パラリンピックなどの国際競技大会を目指す選手の育成・強化、日本代表選手団の派遣などを行っている。現在は、パラスポーツを普及する取り組みと競技力の向上を図る取り組みを好循環させ、パラスポーツの振興を通じて多様性を認め合う活力ある共生社会の実現を目指すJPSA「2030年ビジョン」を掲げている。

そんなJPSAを運営する事務局のなかで、国内の各種パラスポーツを統括する競技団体と連携しながら、選手強化に向けた国からの助成金交付や国際総合競技大会への選手派遣支援などを行っているのが強化部だ。強化部では、国内にある70程の競技団体に対して事業に応じた強化費としての助成金を交付しており、各団体から申請を受けた事業を審査し、助成金交付後の執行状況管理などを行っている。

「各団体は年間を通じて選手力やコーチ力の強化や遠征といった複数の事業に取り組んでいるため、強化部では事業ごとに受け付けた申請・承認・執行後の管理などを行う必要があります」と伏見氏は説明する。

この助成金事業に関する業務は、主にExcelを中心に管理されており、メールを軸に各団体との連絡を行ってきた経緯がある。「属人的な運用のために負担が大きく、業務基盤を整備して改善していける方法を検討していたのです」と伏見氏は当時を振り返る。実はこの強化費に関連した業務だけでなく、協会全体の業務基盤の整備に向けて、他の業務にも展開していける環境づくりが望まれていたのだ。

協会内にシステム関連の専門部署がないことから、当初は定額制の対面アプリ開発サービスを契約。kintoneをベースに業務基盤の整備を進めてきた経緯がある。

「関連する他の団体に業務基盤をどうしているのかについて相談したところ、サイボウズ社のkintoneを紹介いただきました。データベースや業務アプリ開発が容易なkintoneであれば、競技団体の方にも活用してもらいやすく、セキュリティの面でも安心できると考えたのです」と伏見氏は説明する。

強化部 強化支援課(取材時) 伏見 みずき様(右)、強化部 情報科学スタッフ 林 雄次様(左)
強化部 強化支援課(取材時) 伏見 みずき様(右)
強化部 情報科学スタッフ 林 雄次様(左)

実は競技団体のなかでもkintoneを使った仕組みを活用した実績があったことで、業務基盤としてkintoneが最適な選択肢だと考えたという。

その後、定額制でのアプリ開発支援サービスの契約終了とともに、kintone開発経験を有する林氏が情報科学スタッフとしてJPSAに参画、改めて環境整備に取り組んでいくことに。

「協会内の業務が一般に比べて複雑な状況で、以前契約していた開発支援サービスだけでは吸収できていない部分もありました。そこで、改めてどんな課題に対してどんな仕組みが必要なのかヒアリングを進めたところ、強化費の業務プロセスをシステム化する前に、そもそも競技団体や強化スタッフ、選手などのマスター情報をしっかりkintoneにて整備することから始める必要があると考えたのです」と林氏は説明する。

助成金に関する申請・承認・報告のやり取り70団体以上×事業数

【選定】Excel管理の使い勝手が維持できるkrewSheetが現場展開する際にも必須だと判断

そこでkintoneにてマスター整備を進めながら、レコード情報を外部に公開して競技団体側で内容の確認、修正が可能なプラグインのじぶんページを使って競技団体側の担当者との情報共有できる環境を整備。そして、当初から懸案だった強化費に関連した業務プロセスをシステム化する環境づくりに着手したという。

この段階で注目したのが、Excelライクなインターフェースを持つkrewSheetだった。

団体情報などの管理を全てExcelで行っていたため、操作感を変えずに活用できる環境が必須でした。今後アプリが増えていった場合でも、krewSheetであれば展開しやすいと判断したのです」と林氏は選択のポイントを明かす。伏見氏も「強化費の執行状況を把握するために、競技団体から強化費の使い道などを適宜報告いただくようお願いしています。これらの執行状況も全てExcelで管理しており、Excelならではの計算式を入れて期限管理なども行っていました。krewSheetであれば、Excelと同じような使い勝手で計算式が適用できるなど、我々に適したプラグインだと考えたのです」と説明する。

情報管理だけでなく、強化費の使い方やその金額など競技団体から提出を受ける報告書フォーマットもExcelで作成しており、全ての事業に関連した計画書についてもExcelで提出を受けていた。条件式書式など複雑な計算式を駆使して作成される報告書のフォーマットを大きく変更せず、kintoneアプリ化できるkrewSheetが欠かせないものだと判断。

「競技団体含めてITリテラシーには差があるため、書式を壊すことなく入力を制限するなどきちんと制御できる点もkrewSheetを使うメリットが大きいと考えたのです」と伏見氏。

実はkintoneを導入した当初から、複数アプリ間の情報を集計・加工する際に役立つkrewDataを導入しており、各種アプリの情報を集計する処理に活用していたことも手伝って、強化費に関連した申請承認業務や執行状況の管理に欠かせないプラグインとして、krewSheetおよびkrewData活用を決断したという。

【効果】各種マスター情報の管理とともに、強化費申請から執行状況管理までの基盤として活用

現在は、70ほどの競技団体をはじめ、各種協議会などを含めた150ほどの団体情報をkintoneにてマスター管理しており、最終的には外部団体含めて300名ほどが利用する情報基盤となる見込みだ。実際には、競技団体に所属するスタッフやコーチ、選手などのマスター情報管理アプリとともに、強化費申請から執行状況管理アプリをはじめ、10ほどのアプリをkintoneにて作成。情報管理のインターフェースとしてkrewSheetを、各種アプリ内の情報を集計して他アプリに反映する処理をkrewDataにて実施している。また、Googleフォームと連携して動画投稿できるアプリや競技団体の疑問に応えるFAQアプリなども用意している。

他にも、kintoneにて蓄積されたマスター情報の一部は、帳票出力プラグインにて日本パラリンピック委員会(JPC)の公式サイト上での一覧表示に活用しており、JPCが派遣する国際総合競技大会の選手として出場が内定した際にはkintoneから通知文書が出力できるなど、蓄積された情報の幅も広がっている。

競技団体のマスター情報は、じぶんページを経由して必要な情報のみが確認、修正申請できるようになっており、スタッフや選手それぞれ個別のアプリが作成され、協会側ではkrewSheetにて情報管理を行っている。

「現状はじぶんページにて情報を共有していますが、今後は各団体にkintoneアカウントを付与して直接アクセスできるような運用にしていく想定です」と林氏は語る。

強化費に関連したアプリは、現状は数団体でテスト稼働を進めている段階にある。強化費の交付決定までを管理する計画・申請書と決定後の執行管理という大きな2つのアプリがあり、それぞれ初回交付、第2次交付といった段階で詳細に管理。選手力やコーチ力の強化、遠征といった具体的な事業に対して、費用の概算や実際の執行金額などが把握できるようになっている。

当初の申請に必要な計画書は、競技団体からExcelで送ってもらったものをインポートし、複数の計画申請を経て事業番号となるIDが割り振られる。そこから事業計画の進捗管理や助成金の執行状況を管理する報告・審査アプリに情報が展開されていく運用となっている。

手作業入力から解放、Excel感覚で作業しやすい、申請状況を把握しやすい

「最終的には執行した費用の証憑含めてドリルダウンできるような状態に持っていきたい」と林氏は説明する。また、協会とは別団体の承認を経るプロセスがあり、いずれは外部が行う承認プロセスもkintoneで管理していく構想もあるという。

他にも、執行状況に関する報告書を作成する際には、団体別や期限別といった大きなカテゴリに分けて集計する必要があるが、Excelのピポットテーブルで実現するような集計は全てkrewDataにて実施している。

「krewDataがあることで、報告書のデータをもとに、申請書の提出状況や期限別進捗、事業総数の把握など、フィルター条件を柔軟に変更した形での集計が容易になっています。kintone単体では難しい処理もkrewDataがうまく対応してくれています」と林氏は評価する。

インポートされた申請内容と計画・申請書アプリからkrewDataで報告・審査アプリに自動集約
▲ インポートされた申請内容と計画・申請書アプリからkrewDataで報告・審査アプリに自動集約
■ 展開の容易さや高度な処理まで、懐の深さが魅力のkrewシリーズ

今回kintoneとkrewシリーズを組み合わせて強化費関連の業務プロセスをシステム化したことで、Excelやメールを中心とした属人化した環境から脱却する第一歩を踏み出すことに成功。ITリテラシーの差に依存しない環境整備が進められたと評価する。

「協会内で担当者が変わった際にも、レベルを落とすことなく管理していけるような環境づくりが進められています。いずれ競技団体側にも活用の幅を広げていく予定となっており、さまざまな障がいを持った方にも使ってもらいやすい環境整備を進めていく下地が整えられたのは大きい」と伏見氏は評価する。

特にkrewDataを活用したことで、各種集計作業の自動化によって業務の効率化に大きく貢献しているという。

「例えば他団体から都道府県別や強化指定選手の人数、男女別比率などの問い合わせがあった場合、これまでは70団体分のデータをExcelに貼り付けて集計するといった作業が必要でした。今ではリアルタイムにアプリ間の集計ができるため、業務の負担が大きく軽減できています」と評価する伏見氏。

また、メールを中心とした競技団体とのコミュニケーションツールをkintoneとkrewシリーズに置き換えていくことで、コミュニケーションロスを軽減しながら競技団体側の管理負担軽減につながるなど、情報プラットフォームとしてのさらなる効果に期待を寄せている。

「これまで競技団体側にメールで展開していた情報が集約できたことで、遠征先からでもすぐに確認できるようになるなど、競技団体からも評価の声が寄せられています」と伏見氏は評価する。

特にExcelの見た目が表現できるkrewSheetであれば、これまでの表示順や色分けされたセル表現などわかりやすく可視化できるため、競技団体への展開も容易なはずだと力説する。「入力制御が可能なkrewSheetだからこそ、書式がずれて後で大がかりな修正が発生するような状況も回避できます。後工程の部分でも負担が軽減できるはず」と伏見氏。

実際に開発を手掛けている林氏は「Excelのように使えて導入ハードルを下げてくれるkrewSheetはもちろん、細かな集計が可能なkrewDataはバックエンド処理においても大いに貢献しています。展開の容易さや高度な要望まで応えてくれるなど、懐が深いkrewシリーズはとてもありがたい」と高く評価する。

krewSheetが適用された計画申請書 進捗状況や事業の実施日などが団体ごとにひと目でわかる
▲ krewSheetが適用された計画申請書 進捗状況や事業の実施日などが団体ごとにひと目でわかる
krewSheetが適用された報告審査状況の画面
▲ krewSheetが適用された報告審査状況の画面
■ メディカルチェックにおけるプロセスなど新たな用途に期待

現在は強化費関連の業務プロセスを一部の団体向けに試験展開している段階だが、今後はさらに展開数を増やしていく予定だ。将来的には選手の情報発信プラットフォームとしても活用していけるよう、スマートフォンでの活用も含めて検討を進めていきたいという。

「今はメールでデータ送信や紙文書で各種情報を配信していますが、情報プラットフォームを活用して一斉送信できるような環境も整備していきたい。また競技団体側で担当者が変更になったとしても、過去の情報がきちんと追いかけていけるように情報をうまく蓄積していきたい」と伏見氏は期待を寄せている。林氏も「選手に対しては、専門医からの問診票を提出してもらうメディカルチェックなどを求めていますが、これまでは紙でのやり取りが中心でした。このプロセスにもkintoneおよびkrewシリーズをうまく展開していきたい」と語る。もちろん、競技団体のみならず、強化費に関して承認を行う関係団体との連携も視野に、業務プロセスのデジタル化をさらに加速させていきたいと意欲的だ。

現在は、krewSheetおよびkrewDataが協会の業務基盤として生かされているが、蓄積した情報の可視化に役立つkrewDashboardについての展開も十分考えられるという。特に申告書をはじめとした競技団体からの書類に関する提出状況など、フィルターを駆使して必要な情報を分かりやすく表示するといったニーズが出てくれば導入も検討できると伏見氏に今後について語っていただいた。