公開日:2026年10月9日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
湘南エリアを中心に賃貸マンションや商業施設、PFI事業などの建設工事を手がける株式会社丸山工務所では、長年利用してきたAccessを中心に、ExcelやANDPADを組み合わせて案件や工事工程を管理していた。しかし、Accessを閲覧・操作できる人が限られ、複数案件の工程を横断的に確認できないことが課題となっていた。
そこで同社は、案件・工程情報をkintoneに集約。案件管理アプリに登録された複数の日付データをkrewDataで工程表に適した形へ加工し、krewDashboardで複数年の工程を一覧できるガントチャート風の画面を構築した。これにより、関係者が同じデータを見ながら案件全体を把握し、将来の人員配置や協力会社の手配を検討できる環境を整えている。その取り組みについて、kintone導入の社内担当・窓口を務める総務経理部のご担当者様に伺った。
課題
古いAccessによる属人的な管理では、複数年にわたる工事工程を横断的に把握できなかった
株式会社丸山工務所は、ユーミーらいふグループの一員として、湘南エリアを中心に賃貸マンション、商業施設、PFI事業などの建設工事を手がけている。
同社では、十数年前のパッケージ版をもとに構築したAccessの既存システムを使い、案件・契約情報、工事番号、工事名、各工程の日付、請負金額や入金などを管理していた。新築案件の見積、原価管理、工事進捗状況報告書などにはExcelを使い、施工側ではANDPADも利用していた。
しかし、Accessの既存システムは古く、閲覧・操作できる人が一部の担当者に限られていた。担当者以外が案件の状況を確認しにくく、情報管理が属人化していたという。また、予実で管理されていたため各工程の開始から終了までをバーチャート形式で一覧することができなかった。会議の際にはExcelで資料を作成し、グループ会社へ配布する作業も発生していた。
特に課題となっていたのが、複数案件を横断した工程確認だ。全案件の状況を把握するためには、案件を一件ずつ確認する必要があった。さらに、グループ会社の営業・設計部門とも案件情報や工程を共有しづらく、人員配置や協力会社の手配を早い段階で判断することが難しい状況だった。
開発工事の増加により、着工までの工程を数年単位で見通す必要が生じた
工程管理を見直す大きなきっかけとなったのは、盛土・切土を伴う開発工事の増加だった。測量、設計、開発許可、建築までの工程が長期化し、案件によっては着工までの予定を数年単位で管理する必要が生じた。
また、グループ会社の営業部門から持ち込まれる案件について、自社と木造建築を担当するグループ会社のどちらが施工するかを上位者が判断するため、複数案件の工程と担当者の状況を横断的に確認できる情報が求められていた。
そこで同社は、引き合いから工事までの案件情報を一元管理し、複数案件の工程をガントチャート形式で見える化する環境の整備に着手した。まずは案件・工程管理の仕組みを構築し、将来的には原価管理、実行予算、請求までを同じ基盤に集約する構想を描いた。

選定
自社の運用に合わせて拡張でき、関係者全員で情報を共有できるkintoneに注目
同社が新たな基盤として選んだのがkintoneだった。古いAccessから脱却し、案件、工程、契約、原価などの情報を一元管理するとともに、一部の担当者だけでなく、関係者全員が必要な情報を共有できる環境を目指した。
kintoneへの移行にあたって重視したのは、自社の業務に合わせて項目を追加・変更できる柔軟性だった。入力のしやすさを保ちながら、閲覧者の目的に応じて集計や表示を切り替えられること、将来的に原価管理や請求業務へ拡張できること、グループ会社との情報共有に活用できることも選定のポイントになった。
一方で、現場が受け入れやすい画面であることも欠かせなかった。さらに、会議資料としてExcelやPDFへ出力できること、導入後の保守や調整がしやすく、新たな属人化を生まないことも重要な条件だった。
一般的なガントチャートプラグインでは、同社に必要な複数年の工程を表現しづらかった
kintone上で工程を可視化する方法として、同社はまず各種ガントチャートプラグインを検討した。しかし、一般的なガントチャートの画面では、同社に必要となる複数年のマスター工程を一画面に収めることが難しかった。
日付単位で長期間を表示すると、画面や出力資料の幅が大きくなり、印刷枚数も膨大になる。専用プラグインではPDFの横幅が固定され、右側へ期間を伸ばした形での出力も難しかったという。グループ会社との会議で使用するには、年・月・週・日などの単位で期間を切り替え、必要に応じてExcelへ出力・加工できる仕組みが必要だった。
また、従来の工程表に近い見た目で、現場担当者、上位者、グループ会社がそのまま使えることも要件だった。工程表の左側に表示する案件情報を自社で追加・調整できる柔軟性も求められていた。
krewDataでデータを整え、krewDashboardでガントチャート風に表現
検討の結果、同社はkrewDataとkrewDashboardを組み合わせて工程表を構築することにした。
案件管理アプリの1レコードには複数の工程日付が登録されている。そこでkrewDataを使い、それぞれの日付情報を工程表で扱いやすいデータ構造に加工。引合案件、工事案件、工事担当者別という3つのデータ編集フローを作成した。フローは夜間に自動実行され、必要に応じて手動で再実行することもできる。

加工したデータは、krewDashboardで年・月・週・日単位の工程表として表示する。krewDashboardのグラフ種に、ガントチャートはないのだが、工程に該当する日付のセルへ数値を入れ、背景色と文字色を同じ色に設定することで、ピボットテーブル上にガントチャート風のバーチャートを表現している。

▲ krewDashboardで作成したガントチャート風の工程表
これによって、従来の工程表に近い見え方を維持しながら、案件情報と工程を同じ画面で確認できるようになった。年・月・週・日で表示期間を切り替えられるほか、ExcelやPDFへの出力にも対応。Excelでは長期間の工程を右方向へ展開でき、グループ会社へ配布する会議資料としても利用しやすい形を実現した。
krewDataとkrewDashboardを選んだ理由については、既存の工程表に近い見え方、案件情報と工程情報を同時に確認できること、複数案件の横断的な見やすさ、データ加工・集計と可視化の自由度、保守・調整のしやすさ、将来的な拡張性などを総合的な観点から採用したとのこと。
効果
複数案件の工程を一画面で見渡し、関係者が同じデータを共有できる環境へ
現在は、事務部門と工事部門を中心にkintoneを利用。情報の更新は主に経理・アシスタントなどの事務担当者が行い、工事担当者や上長、経営層が閲覧しているとのこと。グループ会社には、会議資料として工程情報を共有しているそうだ。
管理対象は新築の賃貸マンションを中心とする案件で、測量、設計、開発許可、建築まで複数年にわたる工程を扱っている。日常的な進捗確認のほか、会議や打ち合わせ、人員配置、上長・経営層への報告など社内への浸透がうかがえる。
導入後の大きな変化は、複数案件の工程を1つのガントチャート風画面で横断的に把握できるようになったことだ。以前は案件を一件ずつ開いて確認する必要があったが、現在は複数案件の進捗や予定を一画面で見渡せる。
また、これまで一部の担当者しか扱えなかった情報をkintoneに集約したことで、関係者が同じデータを見ながら案件について話せる環境が整った。担当者以外が状況を把握しにくかった状態を見直し、情報の属人化を抑えることにもつながっている。
人員配置や協力会社の手配を、先の工程を見ながら検討
複数案件の将来工程を横断的に確認できるようになったことで、人員配置の判断もしやすくなった。どの案件に誰を現場代理人として配置するか、担当者に空きが生じる期間はいつかといった状況を把握し、案件への割り当てを検討できる。
関係者が同じ情報をもとに話し合えることで、工程に対する認識のずれを抑え、将来を見越して計画的に動くための基盤となっている。
さらに、ガントチャート風の工程表をExcelやPDFへ直接出力できるようになったことで、グループ会社との会議で使用する資料の作成・配布も行いやすくなった。
今後は運用実績を蓄積しながら、業務時間やリソース調整などへの効果を検証していく予定だ。

工程管理を起点に、原価・実行予算・請求までを同じ基盤へ
今後は、工程管理で整備した基盤を原価管理、実行予算、請求書発行へ広げ、見積から原価、請求までをkintone上で連携させる構想だ。工程だけでなく、原価や実行予算などの金額情報も見える化し、同じ基盤で管理することを目指している。
将来的には、蓄積した情報を活用した概算積算や人員配置の提案など、AIを取り入れた業務支援も検討している。株式会社丸山工務所では、複数年にわたる案件と工程を可視化する今回の取り組みを出発点に、案件、工程、原価、請求をつなぐ情報基盤の構築を進めていく。
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