公開日:2026年6月16日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
「自分の生きる道の創造と独自性の経営」を掲げる山形県山形市の株式会社KOEIは、創立70年超の総合設備エンジニアリング企業である。空調・衛生設備の設計・施工を中心に、公共施設や大型工場の設備工事で県内トップクラスのシェアを誇り、「地域未来牽引企業」にも選定。総勢13社の「koeluグループ」を軸に、建設からメンテナンスまで一気通貫の体制構築を目指している。同社では施工管理やアフターメンテナンスの管理基盤としてkintoneを採用し、用途拡大に伴うデータの一括修正や指標集計にkrewシリーズが活躍している。その経緯を経営企画本部 菊地 利行氏に伺った。
課題
メンテナンス部門に必要な管理業務を既存パッケージシステムに適用するのが難しい
創立70周年を迎えた2024年を契機に、弘栄設備工業から新たな社名として生まれ変わった株式会社KOEI。空調をはじめ、給排水や上下水道など建物の設備の設計・施工を行う総合設備エンジニアリング企業として、本社のある山形県をはじめとした東日本を中心に、北海道や東京などにも事業所を展開。
自治体庁舎や学校、店舗、工場、宿泊設備、病院やマンションなど、幅広い設備での施工実績を誇っており、多数の技術技能資格者を有するなど豊富な経験とノウハウを生かした事業を展開している。
そんな同社では、建物設備の施工だけでなく、メンテナンスをはじめとしたアフター保守サービスも手掛けているが、それらの業務を支える管理基盤は市販の案件管理システムをカスタマイズしたもの。“グッと現場”の社内呼称で長らく施工管理やアフター保守の管理を行っていたという。
「業務管理の基盤がパッケージ型のシステムだったので、現場の管理に必要な項目を追加するといった ことはカスタマイズ対応してきました。そんな折、メンテナンスを担当する部門から管理項目をさらに増やしたいという声が挙がってきたのです」と一人情シスとしてシステムを支える菊地氏は当時を振り返る。
顧客情報は施工およびメンテナンス双方の業務で共通化していたものの、施工とメンテナンスでは業務を管理する項目が異なるため、施工管理業務に適していたパッケージはメンテナンス部門にとって使いづらく、Excelで業務を管理する状況が続いていた。また、修理に赴くメンバーの空き時間情報を把握する仕組みなども求められていたという。

「管理の幅を広げていくためには、カスタマイズ対応が難しいパッケージシステムではなく、自由な拡張性を持った仕組みが必要だと実感したのです」と菊地氏は説明する。そこで、現場から寄せられるふわっとした要望に応えられる柔軟性に富んだサイボウズのkintoneに白羽の矢が立ったという。

選定
Excelライクな入力や、売上予測の集計・可視化ニーズに適したkrewシリーズを現場が欲したタイミングで導入
kintone導入後、現場のさまざまな課題に細かく対応するアプローチでアプリを作成し、改善を続けていた菊地氏だが、当初からkintoneプラグインのkrewシリーズは認識していたという。
「いずれ現場からExcelライクな入力方法やデータの一括修正などを求められる場面が来ると思っていましたし、予実管理などでアプリ間のデータ集計ニーズも必ず出てくる。数字を扱うようになれば、可視化に必要なダッシュボードも欲しくなる。当初からそういった要望に応えられるkrewシリーズを導入するタイミングは必ず訪れると予想していました」と菊地氏。
しかし、今必要なこと以外は現場に響かないと考えていた菊地氏は、できることを先回りして伝えていくのではなく、現場の今のニーズに合わせて環境を用意していくべきだと判断。
「現場からこれができないかと問われた時に、費用をかければできるよと伝えたうえで、費用対効果を考えながら少しずつプラグインを増やしていくことを選択しました」と菊地氏。
果たして菊地氏の予想通り、メンテナンス部門に求められていたアフター保守の案件管理アプリや施工や修理に必要となる共通の顧客管理アプリなどをkintoneで開発・運用していくなかで、ExcelのようなUIでデータ修正を一気に実施したいという現場からの声が高まりkrewSheetを導入。
その後、メンテナンス部門で活用が進むkintoneのうわさを聞きつけた各部門が、施工管理領域でもkintoneを使いたいと求めたことで、全社的な業務管理システムを既存パッケージからkintoneへと大きく舵を切ることになった。最終的には受注前の案件管理にもkintoneを利用することを営業部に働きかけ、一元的な業務管理基盤として全社でkintoneを活用することになったという。
「原価管理や設計時の見積管理など、管理基盤がなくExcelで行っていた業務をシステムで一元管理したいという要望が各部署から寄せられ、多くの部門でkintoneによる業務基盤を整備する流れができました」と菊地氏。
kintoneに一元的に業務データが蓄積されるようになると、営業部門から受注予定の金額や決定工事の着地予測が見たいという声が出始めたという。菊地氏はそれを実現するにはアプリ間での集計が必要なことを現場に理解してもらいkrewDataを導入。集計したデータを可視化するために、krewDashboardも導入した。
「アプリ間の集計が可能な他のプラグインも検討しましたが、検証のなかでkrewDataの分かりやすさを実感しました。krewDashboardも視野に入れていたこともあり、サポートを考慮してkrewシリーズで統一したほうが大きなメリットが得られると判断したのです」と菊地氏。
結果として、現場のニーズに合わせてじっくりkintoneを浸透させていくなかで、求められた機能を実現するための手段として、krewシリーズが選択されることになったのだ。
効果
一人情シスが手掛けた、現場に意識させないDX化
受注前の営業活動から受注後のアフター保守まで、全社に必要な業務基盤を整備
現在は、全社員および修理専門のグループ会社の社員を含めて170名ほどがkintoneを活用し、“新グッと現場”という名称で50前後のアプリを運用している。
大きくは、工事番号の発番や顧客情報などを管理するアプリ、各種マスターアプリ、受注前の営業案件アプリや設計予定アプリ、受注後に工事部門が使う工事案件アプリ、担当者予定アプリ、そしてメンテナンス部門が使うメンテナンス案件アプリ、作業予定アプリなど、部門ごとの業務に沿ってアプリを作り分けている。他にも、受注額の着地予測など数字関連のアプリや社内検査アプリなど、さまざまなアプリが用意されている。
ExcelライクなkrewSheetは半数ほどのアプリに適用されているが、その1つが営業案件アプリだ。受注前の営業案件の受注額見込をkrewSheetのXrossモードで集計し営業所ごとの売上予定額を算出。内訳の案件は関連テーブルから確認できるようにしている。営業案件から工事番号を発番しているため、受注確定後は工事案件アプリに管理が引き継がれ、請負金額や原価含めた粗利率などの集計とその工事内訳をkrewSheetで行っている。この受注前と受注後の数字をkrewDataで突合し着地予測を実施。営業会議などで使う資料となるため、krewDataのリアルタイム実行にて数字を反映させている。




▲営業案件と工事案件を突合させるデータ編集フロー図
krewDataについては、売上や粗利といった案件数字の集計だけでなく、社員マスターと連携させながら資格取得日や技能講習、更新日管理などを自動計算する際にも重宝している。いわゆるタレントマネジメントの機能もkintoneとkrewDataでうまく実装している状況だ。
「本来であれば人事システム側で管理されるべきと思われるかもしれませんが、設計・施工や現場監理に必要な資格情報はkintone上にあるため、研修やOJTなどの情報もこちらで管理できるようにしています」と菊地氏。
krewDashboardを使った分析アプリでは、部門別や都道府県別、受注区分別、工事区分別など受注済みの詳細な案件数字が過年度含めてグラフにて可視化できるようになっており、物件ごとの詳細な情報から利益の見込める案件を見極めるなど、営業戦略立案につながるさまざまな分析が可能だ。また、受注前の営業案件に関する情報も可視化しており、営業活動における分析にも役立てている。
「ニーズに応じたダッシュボードはもちろん、社内検査の状況可視化や設計に関連した数字の見える化など、私自身のアイデアとして形にしています。自分たちの気づきやアイデアが膨らむきっかけになるよう、いろいろ作り込んでいます」と菊地氏は説明する。


▲工事案件の受注合計、粗利合計を可視化したkrewDashboard 上:区分ごと、下:部門ごと
工数20%削減ながら売上25%増を達成、意識せず高度なDX化を全社に展開できた
受注前の案件管理から受注後の工事管理、アフターメンテナンスの案件管理まで、kintoneおよびkrewシリーズを用いてシステム化し可視化たことで、導入前に比べて売上は25%ほど増やしながら、工事に関連した作業工数は20%ほど削減することに成功しているという。
「以前は作業員が割り当てられるかどうかも利益が見込めるかどうかも曖昧な状況で受注していた案件が、今では数字を見ながら効率的に営業活動ができるように。工数を減らしながら売上増につなげることができています」と菊地氏は評価する。
当初は想定していなかった効果が実現できるなど、現場を巻き込みながら高度なDX化を自然な流れで実現している。
「案件は数多くあるけれど、それを施工する工事部のほうが手一杯という状況でした。システムで人の配置や受注の着地予想ができるようになったことで現場が効率よく回っていると感じています。こういった効果や分析による数字の可視化を社長に伝えたときに、『まさにこれがDXなのでは?』と評価されたました。案件管理の課題解消から始まった今回のシステム導入が、結果として全社的なDXの大きな流れを生み出すことができました」と菊地氏。
現場の反応を見ながらシステムの改善を続けたことで、自然な流れのなかで達成したKOEIのDXは、Excelを駆使して業務管理していた環境から脱却でき、受注前からアフター保守まで情報が一元管理できたと現場からも喜ばれている。
「社内検査を実施する部署では、従来Excelで個別管理していたものが、kintoneとkrewシリーズで情報共有が楽になった評価の声が寄せられています」と菊地氏は述べる。

krewシリーズについては一人情シスとしての菊地氏にとってはなくてはならないプラグインだと評価する。「Excelのような画面で作業したいという現場ニーズに応えられるので、私にとってはマストなソリューションです」とのこと。
また、メシウスに対しては、充実した手厚い支援を高く評価する。
「技術サポートに問い合わせたときにサンプルデータやアプリの中身を解析したうえで、具体的なやり方を分かりやすく説明してもらえました。非常に手厚く支援いただけています」と菊地氏の評価は高い。
一人情シスの工夫「押し付けにならない」「種まきを欠かさない」
ITに不慣れな現場にスムーズに新しいシステムを展開できたポイントの1つは、既存システムの延長であることがイメージしやすいようにkintoneという名称を使わず “新グッと現場”と名付けたところだ。また、会社から押し付けられた仕組みという印象にならないよう、現場からニーズが出ない限り動かないことだという。
「もっと便利な仕組みになると私が思ったとしても、理解されないうちは先回りして実装するようなことはしません。サンプルを作ってみせるなど、現場に種まきばかりをしています。自分ごととして捉えてもらえないと現場に広がっていきませんし、活用してくれません」と菊地氏。
アプリの見せ方も、本来であれば大きく“受注前”“受注後”という括りでまとめたいところだが、営業案件や工事案件、メンテナンス案件といった名称に慣れた現場にとっては、違う括りにしてしまうと押し付けられたようなシステム導入になってしまう。自分たちで管理していくという意識を強く持ってもらうためにも、現場の意見を強く反映させるようにしているという。システム的には、案件登録フローを徹底させるべく、工事や修理の案件登録時には、必ず番号発番アプリにて番号を取得しないと先に進めないようにするといった工夫も入念に施している。
深化と進化を続けながら、やる気を醸成し続ける
今後については、kintoneとkrewシリーズを駆使して深化と進化を図っていきたいという。
「もっと色々な機能をつけて使いやすさを向上させて管理できていなかった項目を付加するといった深化させていく方向とともに、取引先やパートナーなど外部との横の連携を広げていく進化にも取り組んでいきたい」と菊地氏は意欲的だ。
新たな試みの一例としては、kintoneが持つAI機能を活用し、検査項目の不備をアドバイスするようなアプリを試験的に作り上げているそうだ。今後も色々なアイデアを試していきながら、業務改善の気づきを促しているという。
システムは利用者がどれだけ自分事として捉えるか大事な為、現場のモチベーションを意識的に高めつつ、自分事にしていく挑戦を今後も続けていきたいと最後に語っていただいた。


