公開日:2026年10月28日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
自動車部品および住生活関連機器のソフトウェア設計・開発を手掛けるアイシン・ソフトウェア株式会社では、DX推進部の設立をきっかけに、Excel中心の業務を見直し、業務基盤としてkintoneを導入した。同時に、複数アプリのデータを集計・可視化/分析し、Excelに慣れた現場への展開を後押しするkrewシリーズも採用している。その経緯と成果について、DX推進部 室長 齊藤 行貴氏にお話を伺った。
課題
Excel中心の業務を見直し、データ活用基盤の整備へ
世界有数の自動車部品メーカー「アイシン」グループの一員であるアイシン・ソフトウェア株式会社。自動車部品および住生活関連機器のソフトウェア設計・開発を手掛け、車両制御や安全機能、コネクティッド領域など幅広い分野からモビリティの進化を支えている。
同社でバックオフィス領域のDX推進を担うのがDX推進部だ。同部では、非IT人材を市民開発者へ育成する「全員DX人材化」を掲げ、現場主導で業務を改善できる環境づくりを進めている。
その第一歩として社内のデータ管理状況を調査したところ、多くの業務がExcelに依存していることが分かった。マクロによる自動化が進む一方で、ファイルの保存場所や最新版が分からない、データ量が増えると動作が重くなる、ファイルが破損するといった問題も生じていたという。
「社内調査や予算管理業務を確認する中で、依然として多くの業務がExcelに依存していることが分かりました。処理が重く、ファイル破損のリスクもあり、この環境から脱却したいと考えていました」と齊藤氏は振り返る。

選定
現場での内製化と定着を支えるkrewシリーズ
そこで同社は、現場の担当者が自ら業務改善を進められるデータ管理基盤としてkintoneに着目した。ほかのCRMツールも検討したが、費用や学習コストを踏まえ、現場で内製しやすいkintoneの採用を決定。2023年1月から利用を開始した。 導入初期はパートナーの支援を受ける方針とし、コムデックから提案されたkrewSheet、krewData、krewDashboardも同時に導入した。
「複数のアプリにあるデータを集計できるkrewDataと、データを分かりやすく可視化して分析できるkrewDashboardに注目しました。特にkrewDataは、コミュニティで“神プラグイン”と表現するほど高く評価しています」と齊藤氏は語る。また、予算管理業務では複数アプリのデータを連携できるkrewDataに加え、Excelに近い操作性を備えたkrewSheetも重要だった。各部署の管理職に毎月の見込みをスムーズに更新してもらうには、従来のExcelのように入力できることが現場への定着を考えるうえで必須だったからだ。
こうして、現場での内製化と既存業務からのスムーズな移行、複数アプリのデータ連携と可視化、分析まで実現する基盤として、kintoneとkrewシリーズを組み合わせた活用が始まった。

活用
予実管理を中心に、人事業務やマスタ管理にもkrewシリーズを展開
■予算・実績・見込みを一元管理し、経営判断を迅速化
同社におけるkrewシリーズ活用の中心となっているのが、全社の予実管理業務だ。従来は約12部門それぞれがExcelで予算や見込みを管理し、事務局がそれらのファイルを確認・集約していた。ファイルごとにパスワード管理が必要だったほか、容量増加による動作遅延やファイル破損のリスクもあり、集計や確認に多くの工数がかかっていたという。
現在は、予算データと外部システムから取り込む実績データをkintone上で管理し、krewDataで集計・統合する仕組みを構築している。月別・部署別・科目別・案件別でデータを管理し、各部門の担当者はkrewSheet上で今後の計画や見込みを更新する運用だ。
「各課の管理職には毎月見込みを更新してもらう必要があります。krewSheetはExcelに近い感覚で操作できるため、現場にもスムーズに受け入れてもらうことができました」と齊藤氏は説明する。
さらに、集計されたデータはkrewDashboardで可視化され、最新の予算執行状況や年間見込み、予算と実績の差異などから状況を分析できるようになった。


▲krewSheetを適用した実際の予実管理の画面

▲実際のkrewDashboardの画面
■人事情報の更新業務を自動化
人事領域でもkrewDataが活用されている。入社・異動・退職などに関する各種申請情報をもとに、人事データベースへ情報を反映する仕組みを構築。複数のアプリにまたがる情報をkrewDataで処理し、人事マスタの更新業務を効率化している。
また、今後はタレントマネジメントシステムとの連携も予定しており、さらに自動化の範囲を広げていく考えだ。
「人事系の情報は更新頻度も高く、人手によるメンテナンス負荷も大きい領域です。krewDataによってデータをつなぎ、自動で処理できる仕組みを構築しています」と齊藤氏は語る。
■大量データの登録・メンテナンスを効率化
現場で最も利用されている機能の一つがkrewSheetだ。同社では新卒社員の受け入れ時など、数十件単位でデータを登録する業務が発生する。kintone標準画面で1件ずつ入力する運用では負担が大きいが、krewSheetを利用することで一覧形式での一括登録や編集が可能になった。
「新卒入社時には60~70名ほどの情報をまとめて登録することがあります。krewSheetなら一括で処理できるため、作業時間を大幅に短縮できます」と齊藤氏。
さらに、人事管理で利用する個人識別コードの付番業務でもkrewDataを活用。従来はExcelを見ながら空き番号を探し、手作業で割り当てていたが、現在はリアルタイム実行機能を利用して空き番号の確認から付番までを半自動化している。
Excelライクな操作性を備えるkrewSheetと、アプリ間のデータ連携を担うkrewDataを組み合わせることで、日常業務におけるデータ管理負荷の軽減にもつながっている。
こうした活用は、バックオフィスのさまざまな業務へ広がっている。現在、kintoneは約170アカウントで運用され、対象者の約8割をカバー。学習・検証用を含めると、アプリ数は660を超える。
利用を希望する社員にはアカウントを付与し、トライ・検証用のスペースで自由にアプリを作成できる環境を提供している。本番利用へ移行する際には申請・承認を行う仕組みとし、自由な試行と適切な管理を両立している。
効果
年間約450時間を削減し、会議中の意思決定を迅速化
kintoneとkrewシリーズによる基盤整備により、経営判断に必要な情報を提供しやすくなった。予実管理の結果はkrewDashboardで可視化され、数字から明細へ移動して詳細を確認し状況を分析することができる。
「予算確認会で数字の増減理由を問われたとき、以前は持ち帰って確認することがありました。今は担当者がその場で詳細を絞り込み、すぐ回答できます。その結果、経営層も追加確認を待つことなく、その場で判断を進められるようになりました。経営層からも高く評価されています」と齊藤氏は語る。
業務効率化の効果も大きい。以前は、1つのExcelファイルにまとめると処理が重くなるため、約12部門分のファイルと集約用ファイルを合わせ、約13個のパスワード付きExcelファイルを運用していた。事務局は各ファイルを開き、入力状況を確認したうえで集約する必要があったが、現在はkrewDataで集計処理を自動化し、確認や集約の手間を大幅に減らせたという。予実管理に関わる年間工数は約700時間から約250時間へ短縮され、年間約450時間を削減。作業回数も10分の1まで減少した。
krewSheetによって、情報の更新や検索も容易になった。
「Excelの頃は、事務局が目的の情報がありそうなファイルに当たりをつけ、個別に探していました。今はキーワードを入力するだけで全部署のデータを横断して検索できます。必要な情報へすぐたどり着けるようになりました」と齊藤氏は話す。
また、krewシリーズは、kintoneに対する現場の評価を変えることにも貢献した。
「標準機能だけを見て、できることが限られると感じる人もいました。しかし、krewシリーズを組み合わせることで活用の幅が格段に広がり、否定的な声は少なくなりました。また、従来の管理方法を変えたくないという人にkrewSheetを見せると、『これならやってみよう』と前向きな反応に変わります」と評価する。 学習コンテンツの充実も、市民開発を支えている。
「最近はkrewシリーズのドリルをよく活用しています。現場から相談されたときも、まずドリルを試してもらうよう案内しています。社内で教育コンテンツを一から用意せずに済む点も魅力です」と齊藤氏は語る。

■今後は最新の現場データを可視化し、経営判断への活用を拡大
今後は、タレントマネジメントシステムなど周辺システムとの連携を強化するとともに、krewDashboardの活用範囲を広げる方針だ。
「グループ全体では別のBIツールが推奨されており、大量のデータや長期的な履歴はそちらで扱います。一方、現場に近い最新データをすぐ確認する用途では、kintoneとkrewDashboardが優れています。用途を分けながら、各部署へ活用を広げたいですね」と齊藤氏は期待を寄せる。
経営情報の見える化についても、予算だけでなく人員情報など経営層の判断に必要な情報もダッシュボード化していく考えだ。今後はダッシュボードを活用し、経営に必要な情報を横断的かつタイムリーに可視化することで、より迅速な経営判断につなげていきたい。また、Excelにしか存在しない情報についても、適性を見極めながらkintoneとkrewシリーズへの移行を進めるとのこと。
さらに、同社はkintone活用のノウハウをアイシングループ内へ還元していく。
「グループ内でkintoneに関心を持つ人に声をかけ、コミュニティも開催しています。私たちが蓄積したノウハウを生かし、グループ全体に貢献していきたい」と齊藤氏は今後の展望を語った。
この事例の導入支援パートナー



