導入事例
社会医療法人 健生会様
業種:
医療・福祉
利用用途:
レセプト業務
使用製品:
krewSheet・krewData
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
医療・介護における現場の業務改善を推進するための強力な武器
kintoneの基本機能では補えない処理に不可欠なkrewData
奈良県にて医療および介護事業を展開する社会医療法人健生会では、各事業所における業務課題の解決に向けてサイボウズが提供するkintoneを、kintoneアプリ間に蓄積された情報の集計やデータ加工に最適なソリューションとしてグレープシティが提供するkrewDataを活用している。その経緯について、システム管理課の中尾 典隆氏にお話を伺った。
【課題】患者と職員双方を幸せにする仕組みづくりに向けて現場の課題を拾い上げる
奈良県中和地域と生駒市に病院や診療所、介護老人保健施設などの介護事業所を展開する社会医療法人健生会。1955年に開設された高田民主診療所から始まり、現在は「無差別平等の医療・介護」を理念に据え、地域医療の中核を担う公益性、公共性の高い社会医療法人として、地域の医療機関・介護施設との連携を強めながら安全・安心の医療・介護サービスを提供している。
そんな健生会にて病院を含めた各事業所のシステム全般を統括しているのが、システム管理課に所属する中尾氏だ。当初は法人内の土庫病院に入所したものの、2018年の組織改編時に健生会のシステム管理課に所属が変わり、現在は健生会全体のシステム管理を担当する立場にある。そんな中尾氏が新たに法人所属になったタイミングに行われたのが、更改時期を迎えていた法人内のグループウェア刷新のプロジェクトだった。「当初は新たな情報共有基盤としてのグループウェアだけを検討していたのですが、事務局長からは攻めの姿勢で業務にあたること、そしてシステムを通じて患者と職員、双方を幸せにすることをミッションとして与えられたのです」と説明する。
そこで、各事業所の現場に赴いて課題を拾い上げ始めた中尾氏が、鍼灸治療院にてヒアリングを行った際に知ったのが、レセプト請求業務(診療報酬明細書の作成と点検)における課題だった。「もともとはAccessにて構築した仕組みがあったものの、担当者の退職に伴ってシステムのメンテナンスが困難になり、結果としてExcelを駆使してレセプト請求業務を継続していたのです。業務負担が大きいという課題解決に向けて検討を始めたのです」と中尾氏。
【選定】アプリ間の情報集計や加工が可能なプラグインとして最適なkrewData
ヒアリングを実施した段階で、鍼灸治療院側では業界に特化した専用のクラウドシステムを検討している状況にあったという。ただし、導入費用だけでも数十万、月額のサブスクリプション費用とともにレセプト請求金額の数%がランニングコストとして発生する仕組みだったのだ。「実はグループウェア検討時にサイボウズのセミナーに参加したことがきっかけで、Excel業務の置き換えが可能なkintoneの存在を知ることに。レセプト請求業務の中心がExcelだったこともあり、多くの費用が発生する専門のツールではなく、脱Excel事例も多いkintoneでも十分置き換えられるのではと考えたのです」と中尾氏。
そこでkintoneの試用期間のうちに中尾氏がkintoneアプリを作成、業務に必要な各種帳票出力はkintoneプラグインのRepotoneUを適用して現場に使ってもらうことに。しかし、アプリごとに入力したデータを集計する機能がなかったことで業務の負担がさほど軽減されず、何か手立てを講じることになったという。そこで注目したのが、同じセミナーに併設されていた展示ブースで話を聞いたkrewDataだった。「JavaScriptでkintoneのカスタマイズは可能ですが、私自身が未経験だったこと、そしてJavaScriptで作り込むと後任に引き継ぎにくくなる恐れも。その意味でも、基本的にはJavaScriptを使わず、プラグインをうまく使っていくことを前提に考えた結果、krewDataが最適だと考えたのです」と中尾氏は語る。
krewDataに注目したのは、アプリ間のデータ集計や加工が可能なだけでなく、当時kintoneで扱えなかったIF関数に対応しており、ITに詳しくない現場スタッフでもチェックボックスだけで入力でき、その情報が抽出できる点だった。「当初はRepotoneUのほうで関数を駆使して金額計算を行う仕組みも考えましたが、どうしても力技になってしまう。“お化けExcel”から脱却するための仕組みであったはずが、結局kintone上にお化けExcelを生んでしまうことになる。そんな環境を避けるにはkrewDataが便利に活用できると考えたのです」。
結果として、現場の課題解決に役立つ業務プラットフォームとしてkintoneを、そして、複数のkintoneアプリ内のデータを加工、集計するためのプラグインとしてkrewDataが採用されることになる。
【効果】kintoneプラグインを駆使して現場の業務課題を次々と解決
kintoneの基本機能を補完、krewがあるとないとでは満足感が違う
現状は、鍼灸治療院におけるレセプト請求業務をはじめとした業務基盤だけでなく、事業所ごとに作成する日報報告の基盤としてkintoneが活用されており、レセプト請求アプリに入力された金額を集計する場面や日報を集計する際にkrewDataが活用されている。「kintoneの基本機能や導入済みのプラグインで作り込んでいき、それでもできない部分をkrewDataで補うといった使い方が中心で、複数のアプリ間を連携させて使う場面でkrewDataが活躍しています。また日付や時間指定で行う処理などの際にもkrewDataを便利に活用しています」と中尾氏。
鍼灸治療院では、医師や患者、鍼灸師などのマスターアプリとともに、同意書管理などのアプリを用意しており、各種マスターをルックアップしながら実績登録アプリに情報を入力、各アプリの情報をkrewDataにて集計したうえでレセプト作成が行われている。また、経理に提出する帳票に関しては、実績登録アプリ上のデータがタイミングによって更新されてしまうため、帳票出力時点のデータをkrewDataにて出力、別アプリに吐き出す処理を行っている。なお、レセプト出力後の修正作業や入金日の入力などには、kintone上でExcelのようなインターフェースを提供するkrewSheetが活用されており、各レコードを開かずとも一覧上で編集できるようにしている。「月単位では数十件ほどなのでkintoneだけでも運用はできますが、krewSheetのありなしで現場の満足感は変わってきます」と中尾氏は評価する。
総務課で取りまとめている日報に関しては、各事業所からFAXやグループウェア経由で送付されてくる日報データを総務課が毎朝確認したうえで打ち直して1つの帳票にまとめていたが、今ではFormBridge経由で日報情報を各事業所が入力し、krewDataにて1つのレコードに集計している。医局から送られてくるスケジュールが入力された日報アプリ用の情報を集計する業務にもkrewDataが活用されている。
krewDataの機能を生かした体調チェックデータアプリでは、体温が未入力のデータを特定のタイミングにレコードとして作成し、kViewerで入力状況を確認したうえでFormBridgeにて自身の体温情報を入力している。「全職員がkintoneアカウントを持っていないなか、手間をかけずに自分の検温データを変更登録できる仕組みを検討しました。kintone単体では集計できない未入力データをkrewDataで作成し、体温情報を選択するだけで入力できるようにしています」と中尾氏。特に最初の緊急事態宣言が発令された前後で早々に職員の体調管理が可能な仕組みが実装でき、事務局長からも高く評価されている。
現場改善の武器として最適な組み合わせとなるkintoneとkrewData
レセプト請求業務では、以前は残業しながら10日ほどかかっていたが、早い月では月初2日以内には提出できるようになるなど、業務の効率化に大きく貢献している状況だ。また、変更履歴や最終更新日が確認できるようになり、レセプト発行時の履歴管理も実施できるなど、業務の品質向上にも大きく役立っているという。「今はレセプト用のアプリからルックアップをかけ、krewDataにて自動計算が可能です。kintoneの標準機能だけでも作成できますが、余計な変換や変換作業で負担をかけたくないですし、ヒューマンエラーを生む可能性も。krewDataにてフローを設計することで、ミスをなくすことができるのは大きい」と中尾氏は評価する。
当初掲げていた攻めの環境づくりについても、krewDataをはじめとした各種プラグインとkintoneを柔軟に連携させることで、現場の課題解決に向けた提案につなげることができる武器として大いに役立っていると評価する。「現場からもレセプト作業の負荷軽減で残業を減らすことができ、効率化した時間を患者に向き合う時間に充てるなどプラスの効果が表れています。総務課の日報作成業務も手作業での転記がなくなり、自動化できたことで楽になったと好評です」と中尾氏。
krewシリーズについては、マニュアルが非常に分かりやすく、困ったことがあればヘルプを参照するだけで解決できることが多く、特別なサポートなく運用できているという。「感覚的に扱えるだけでなく、kintone未対応の関数も使えるため、すごく万能なツールという印象です。トライ&エラーしながら使いやすく改善していくことができるのは、分かりやすくマニュアルが用意されているからこそ」と振り返る。
コミュニティが充実しているkintoneだけに、kintone界隈で公開されている事例も中尾氏のなかで新たな取り組みを始める際の指標として大いに参考になっているという。「医療や介護の現場でkintoneの活用例がメディアでも紹介されており、現場改善の施策づくりに役立っています。前例主義の強い業界だけに、クラウドをうまく活用して業務改善している実例があれば、我々の意思決定にも弾みがつきます」。実は中尾氏自身も奈良県で開催されているkintoneCaféを主催するなどコミュニティ活動にも積極的で、新たなヒントが得られるコミュニティ活動の有用性についても力説する。
事業所内に残る業務課題を整理し、さらなる業務改善につなげたい
現在は鍼灸治療院や総務課での活用が中心だが、当初は法人内にある院内保育所で行われていたExcelでの業務を改善するためのkintoneアプリも用意していた。ただし、多忙な現場のために運用が定着していないため、アプリの見直しも含めて再度トライしていきたいという。また介護事業所や診療所でもシステムに乗っていない業務が数多く残っており、業務改善につながる環境づくりをさらに推し進めていきたいと意気込みを語る。「診療所での定期イベントなどへの受付業務を効率化したり、オンラインで面会申し込みを行う仕組みを用意したりなど、業務改善に役立つ仕組みを今後も実装していきたい」。
krewDataについては、アプリ間で必要な集計や加工業務に引き続き役立てていく計画で、例えばExcelで管理されている、予定の更新が多い医師のスケジュールをマスターからkrewDataのスケジュール実行にてコピーし、kintone上で簡単に修正できるようにしたり、修正後にPDF化してグループウェアのGaroon上に展開する作業を自動化したりといった用途を視野に入れているという。「kintoneを活用する部署が増えてくれば、管理者用にkrewDashboardなどでグラフを作成、可視化するといったことも十分考えられます。改善できる業務や部署を広げていく過程で、グレープシティのソリューション活用をさらに広げていきたい」と中尾氏に今後について語っていただいた。