導入事例

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山九株式会社様

業種:運輸業・郵便業

部署:BS事業本部化学事業統括部

利用用途:作業実績データ管理

使用製品:krewData / krewDashboard

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事例公開日:2023年08月10日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

業務要件の違う職場ごとに必要な管理業務を効率化
データ集計の効率化によってITリテラシ向上に貢献するkrewシリーズ

プラント・エンジニアリング、ロジスティクス(物流)、オペレーション・サポート(構内操業支援)を融合させた独自の事業展開を進める山九株式会社では、顧客の工場での構内作業を中心に請負業務を行うビジネス・ソリューション分野で現場業務の管理を円滑に実施するための業務基盤としてkintoneを展開しており、アプリ内に蓄積されたデータを集計する業務にkrewDataを、情報を可視化するための仕組みとしてkrewDashboardを採用している。その経緯について、化学事業統括部 デジタル化推進グループ 小口 太郎氏、朏島 惇氏、芳賀 聡氏にお話を伺った。

【課題】現場ごとにExcelで煩雑化してしまった管理業務を標準化する施策の検討

1918年に創業、プラント・エンジニアリング、ロジスティクス(物流)、オペレーション・サポート(構内操業支援)を有機的に結び付けた世界でも類を見ないビジネスモデルを武器に、世界で選ばれるアウトソーサー企業をめざす山九株式会社。

山九グループのあるべき姿を描いた「Vision2030」を実現すべく、その具体的な施策となる中期経営計画 2026を推進している。既存事業の収益強化や海外事業拡大など4つの基本戦略に向けて、人財強化やDX・自動化、ターゲットの特定、パートナーとの協業などを強力に推し進めている。特にDX推進については、アナログからデジタル化へと大きく舵を切っており、デジタル活用やビジネスモデル変革へと昇華させていくための施策づくりを積極的に行っている状況だ。

そんな同社が手掛けている事業の1つに、プラント現場管理で培った技術やノウハウを駆使して顧客の工場設備内の作業管理・操業支援を行うビジネス・ソリューションがある。主に鉄鋼業界と化学業界の顧客に対して、構内作業やメンテナンス業務を展開する事業だが、なかでも石油化学系の構内作業を中心にサービスを提供している化学事業統括部で現場のDXを強力に進めているのがデジタル化推進グループだ。

「経理や人事などのバックエンドシステムや、輸配送管理といった基幹系のシステムは以前から社内に整備されていますが、工場内の現場の詳細にまで踏み込んだシステムは、これまでなく、多くの職場ではExcelによる煩雑な業務管理を実施してきました。我々の事業は顧客の工場で構内作業やプラント・エンジニアリングを提供するためお客さまごとに業務内容や報告に必要な情報が異なっており、共通の管理基盤がありません、Excelによる業務管理では顧客ごと(工場ごと)に部分最適化が進み、全体としての管理ができないうえに、集計業務の負担も課題でした」と現場のデジタル化課題について小口氏は説明する。

化学事業統括部 デジタル化推進グループ 小口 太郎様
小口 太郎様
化学事業統括部 デジタル化推進グループ

例えば、作業者がどの配置で何時から何時まで働いたかといった労務管理や生産実績報告、安全管理であれば安全衛生日誌やフォークリフトなどの設備点検状況の集計・集約では、顧客に報告する情報と、山九株式会社としての目標に対する進捗管理などの指標を集計しなければならない。さらに、協力会社が入っている場合はその集計も必要だ。職場の管理者は、主にExcelを使ってこれらの情報を管理していたが、それが大きな負担となっていたうえ、顧客によって管理項目も異なるため、事業全体を俯瞰するようなデータの活用もできなかったという。

krew導入前の課題の概要

こうした課題を解決する新たな基盤を検討するなかで、化学事業統括部のある支店が主導で、kintoneを先行導入した事例を耳にしたと芳賀氏は当時を振り返る。支店が取り組むkintoneによるデジタル化成功事例を参考に、化学事業統括部全体として、客先ごとに異なる管理業務をデジタル化する基盤にkintoneを活用することを決定した。

【選定】日報から外注費や出退勤情報を取得したい。煩雑な計算ロジックをシンプルに集約するkrewData

デジタル化推進グループが中心となり、まず取り組んだのは、試験的にkintoneを展開する職場を1箇所選定し、作業予定や作業実績を記録している手書き日報から出退勤情報や外注費を集計する業務のkintone化であった。

従来はリーダーが紙で作成した日報の情報をもとに、チーフリーダーが出勤簿をExcelで作成し、別の管理職が出勤簿を確認しながら外注費管理や収支管理など目的ごとにExcelへ転記・月次集計していた管理業務である。日報から出退勤と外注費の算出はどの職場でも行われているため、これを自動化できれば多くの職場で活用できると考えたとのこと。

kintone導入前の課題の概要

データをkintoneに取り込み、標準機能やいくつかのプラグインを駆使して蓄積した作業時間や費用を集計する仕組みを構築したが、そこで課題が顕在化することに。

「集計に利用する情報をまとめたり、条件に応じて出力したりするのが複雑でした。条件付けのためのフィールドをわざわざ設定しなければならないなど、あまり視認性よくない、作業者が入力しづらいアプリになってしまったのです」と小口氏。

データを取り込むアプリと出力するアプリを分けて使い勝手のいい環境を整えるなどの工夫をしてみたものの、やはり集計のための計算式が複雑になってしまい、何からの解決策が求められたという。

kintone導入前の課題の概要

そこでサイボウズに相談したところ、紹介されたのが、kintoneアプリ間の集計や加工が自動化できるkrewDataだった。

データを取り込むアプリは機能を割り切って作り、出力するための条件や集計ロジックはkrewDataで分かりやすく集約して格納できることが便利だと感じたのです」と小口氏は評価する。特に複数アプリをまたいで集計できる機能はとても高く評価したポイントだ。

さらに、kintoneのデータを見やすいグラフやチャートにアウトプットできるkrewDashboardについても、kintoneにデータを蓄積していけば、全体をひと目で把握できたり、表示条件を視覚的に切り替えられたりすることでDXがさらに進むと考え、krewDataと合わせて採用に至った

JavaScriptを駆使してアプリの完成度を上げることも可能だった。しかし専門的な知識が必要で自力でのコーディングや改修は難しかった。最終的には現場でもアプリが作れるようなEUC(エンドユーザーコンピューティング)環境を提供したいという思いがあり、プラグインであるkrewシリーズは同社にとって理想的だったのだ。

「我々はシステムの専門家ではないため、できる限りノーコードで開発できるものを前提に考えていました。その意味では、kintoneとkrewシリーズが最良の選択だったのです」と芳賀氏は評価する。

化学事業統括部 デジタル化推進グループ 芳賀 聡様
芳賀 聡様
化学事業統括部 デジタル化推進グループ

そこで、グレープシティにコンタクトをとり、デジタル化推進グループ内で試してみるなかで、現場でも十分使いこなせると判断。結果として、kintoneアプリ内のデータ自動集計と可視化を実現するツールとして、krewDataおよびkrewDashboardが採用されることになる。

【効果】kintoneアプリの可能性を広げることに貢献するkrewシリーズ

■ 集計作業の効率化に大きく貢献、情報分析を進めることで新たな価値提供へ

krewDataにより手書きの日報からをOCRによって読み込んでkintone内のDBアプリにデータとして取り込み、krewDataを使って計算ロジックを組み、出勤簿アプリ、外注費管理アプリ、収支管理アプリにそれぞれ出力する仕組みを構築。従来のExcel転記と集計業務の自動化が実現できたという。

「ある職場では、50名ほどのメンバーが日々の作業を行っており、それぞれ個別の勤怠実績を手書きされた紙から毎日Excelに転記するという労力がかかっていました。今は紙の情報をOCRで読み取り、krewDataで必要なアプリごとに集計して出力できるようになっています。ボタン1つで転記できる、まさに現代版の転記を実現しています」と朏島氏。

化学事業統括部 デジタル化推進グループ 朏島 惇様
朏島 惇様
化学事業統括部 デジタル化推進グループ

業務時間が大幅に削減できただけでなく、転記ミスも防げるようになるなど、krewDataによる効果は大きいという。実際のフローでは、紙の日報以外にも、出勤していない人の情報をCSVにてkintoneに取り込み、出勤簿アプリに集計した上で取引先に提出するレポートを作成するフローも存在している。

krew導入後の日報システム

現在では、日報アプリ以外にも様々な集計にkrewDataが利用されているという。職場ごとに異なる業務フローにも「各職場に影響を与えないよう、同じフローでもコピーしたうえで、それぞれの職場に応じたフローを設定しています」と小口氏は説明する。全体で運用しているフローは40ほどあるそうだ。

kintoneおよびkrewシリーズは石油化学系の構内作業を中心にサービスを提供している8つの支店にすでに展開しており、支店が管理する各職場に導入を進めている段階にある。kintoneは職場の監督者を中心に170名ほどが利用している状況で、マスター系のアプリも含めて600ほどが活用されている。

krewDashboardについては、現時点では職場ごとのデータを集めて可視化する試みを続けている段階にあるとのこと。

「構内巡回によるパトロール結果を拠点ごとに用意されたアプリに記録しているのですが、拠点を横断した形で設備や品質など指摘事項を可視化、分析するといったことを現在試しています。従来は支店の中だけで共有されていたものが、事業部全体で共有できるようになり、他の支店の改善事例を横展開することもできるはず」と朏島氏。

特にkrewDashboardの魅力は、ドリルスルーしてkintoneのレコード詳細まで掘り下げていける点にあるという。「画面の中で条件を切り替えればすぐに切り替わりますし、詳細までその場で確認できれば、意思決定にまでスムーズにつなげていくことができます」と朏島氏は高く評価する。

krew導入後の日報システム
▲ krewDashboardで可視化したパトロール結果。ドリルスルーで詳細内容を確認することも可能
■ 今ある業務のデジタル化に貢献、アプリ開発の可能性をkrewシリーズが広げる

krewシリーズを導入したことで、転記作業の時間が大幅に削減できるなど業務の効率化に大きく寄与している。ある職場では、毎日4時間ほどかかっていた転記作業が、確認含めて1時間程度で済むようになるなど、劇的な工数削減を実現しているという。また日報のようにどの職場でも実施している業務に適用できると、成功事例として各拠点に展開しやすくなる点も大きな効果だという。

「職場が異なって管理項目の違いは多少あっても、作業日報自体は記録していますし、それを集計してお客さまにお渡しする場面も多い。1つの拠点での活動が成功事例として紹介しやすくなった効果は大きい」と朏島氏は高く評価する。

また、アナログ管理からの脱却をkintoneおよびkrewシリーズによって実現できたことで、多くの現場からデジタルツールを活用して業務改善したいという声が寄せられるようになっている。

「デジタル化を通じての改善提案が職場から多く出てくるようになりました。デジタル化を定着させるという我々グループのミッション実現に向けて、職場のデジタルリテラシーの向上には確実につながっています」と小口氏は評価する。

さらにkintoneおよびkrewシリーズがあることで、全社で取り組むDXとは別に、各事業部主体でできるところから始めることができた点は大きいと小口氏は力説する。

「各職場で日々工夫しながら取り組んでいることが、実は全社で見ようとした時に障壁になる部分も正直あります。kintoneおよびkrewシリーズであれば、今やっていることをそのままデジタル化できると胸を張って言えますし、データが蓄積できる仕組みが今作れていることで、いろいろ可能性が広がってくることでしょう」。なかでもkrewシリーズは、kintoneアプリ開発の可能性を広げるツールの1つになっていると評価する。

ツールそのものの使い勝手も好評で、なかでもプレビュー機能が備わっている点は、krewシリーズが使いやすいポイントの1つに挙げている。

「Excelマクロであれば、デバックツールを仕込むなど色々やらなければいけませんが、デバックツールがきちんとkrewシリーズには備わっており、プレビューがあることで試行錯誤しやすい」と芳賀氏は高く評価する。

グレープシティについては、インフラ面など社内におけるITの制約がある場合でも、相談すれば適切なアドバイスが得られ、社内の合意を得やすい環境づくりにも尽力するなど、手厚い支援が得られていると高く評価する。

krewData厳選シナリオ集など学習のためのコンテンツが充実しており、とても助かっています。特にフローを組むためのコマンドをクリックする際に、きちんと説明ページをボタン一つで参照できるだけでなく、飛んだ先に具体的にケース例を踏まえてコマンドの動きが一つ一つ詳細に記載されており、とても分かりやすい。システムに詳しくない私にも理解しやすく、本当に助かっています」と朏島氏。

■ さらなる展開を進めながら、kintoneに蓄積されたデータ活用を加速させたい

今後については、まだ導入できていない職場への展開を進めていきながら、データを蓄積するだけでなく、使っていくための環境整備に取り組んでいきたいという。

「まさにデータ活用を進めていくためには、krewDashboardがその役割を担っていくことになるはずです」と朏島氏。また、基幹システムや顧客が持つ何らかのシステムと連携させ、さらに活用できる場面が広がれば検討していきたいと意欲的だ。

Excelのような操作性を実現するkrewSheetについては、業務に必要になってくれば検討する段階で、現時点でもkrewDataによってフィールド数が減らせるなど、満足度は高い状況にある。

「データを蓄積した後に見ていくさいのインターフェースとしてkrewSheetが役立つ部分はありそうです」と小口氏。また、kintoneおよびkrewシリーズでやれることが増えたことで、職場にタブレットやPCを設置するなど、管理者の意識が変わっていく場面も出てきている。今後はハードウェア環境も含めて、さらなるデジタル化に向けて業務改善につながる環境整備を進めていきたいと小口氏に語っていただいた。