導入事例
株式会社昇栄様
業種:運輸業・郵便業
部署:全社
利用用途:案件管理/業務管理基盤
使用製品:krewData / krewDashboard
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
人手不足の物流業界で定着率を高める仕組みづくりを下支え
kintone活用の幅を大幅に広げるkrewシリーズ
福島県白河市を中心に物流事業を手掛けている株式会社昇栄では、拠点と本社間で紙を中心とした申請業務が行われていたが、電子決裁の仕組みづくりをきっかけにkintoneを採用。多くの業務をkintone化するなか、人事評価の仕組みを整備する際にアプリ間のデータ集計などにkrewDataを、情報活用を加速させる可視化を実現するべくkrewDashboardを活用している。その経緯について、取締役 山﨑 梨英氏にお話を伺った。
【課題】非効率な現場改善に向けたkintone導入推進で父の会社へ入社
1984年に創業し、福島県白河市を中心とした全国19拠点で物流事業を展開している株式会社昇栄。工場内の出張所や自社倉庫を構え、トラックをはじめとした輸送車両や庫内作業車両となるフォークリフトを250台以上保有。所属する200名を超えるフォークリフト有資格者が荷役作業を請け負うことで、顧客の物流を強力に支援している。現在は関東・南東北エリアを中心に事業を展開しながら、顧客の工場展開に合わせて全国に拠点を広げつつある。また、パレットに荷物を積み上げるパレタイズの自動化や自動搬送コンベアを組み合わせたオリジナルのマテハン(マテリアルハンドリング)機器開発を行うなど、物流業務の効率化・省力化に向けたさまざまなソリューションも提供している。
そんな同社では、本社のある白河市を中心に、仙台や埼玉、群馬、宮崎など全国19箇所の事業拠点を展開しているが、かつては本社と拠点の物品申請などのやり取りはFAXを軸に全て紙をベースに行われていた。
「会計システムなど個別の仕組みは導入されていましたが、紙を印刷して押印するといったアナログな業務が中心で、情報管理のためのExcelもバラバラに管理されており、情報共有などが円滑ではありませんでした」と山﨑氏は当時を振り返る。
昇栄は山﨑氏の父が起業したもので、専務取締役として事業に参画していた夫から会社の課題について聞き及んでいただけで、当時の山﨑氏は東京にある児童福祉関係のNPO法人のリモートワークをしていた。そんな折、昇栄社内で電子決裁の仕組みが検討されたという。
「夫から話を聞いていると、非効率なアナログ業務がとても多いという印象でアレもコレもkintoneで改善できるだろうと強く思っていました。私はNPO法人でkintoneを使っていたこともあり、現場へのkintone展開が非効率な業務の改善に有効だと考えたのです。そこで、父の会社にkintoneを展開するべく昇栄に入社したというのが実態です」と山﨑氏は語る。
【選定】フォークリフトマンの人事評価制度をkintoneで構築したい。所属現場ごとに異なるアプリから評価データを一気に集計できるkrewDataを採用
当初は電子決裁専用のシステムの導入を検討していた昇栄であったが、山﨑氏の参画により非効率な業務を見直して改善できるところはkintoneで改善するべく、ライトコースでkintoneを契約。kintoneの基本機能をフル活用し、拠点と本社でやり取りされる物品申請書の電子化やインターネットバンキングでの支払登録アプリなどを山﨑氏自身がアプリ化し、精力的に社内に展開していった。
「kintoneで作業を楽にするのはもちろんですが、まず、Excelなどに情報が無秩序に散らばっているのを整理して、データを整頓することに全力を注いでいました。データが整っていないとそれを活用することもできないし、状況を可視化することもできないので」と山﨑氏。
こうしてデータの整理と業務改善を進めていった山﨑氏は、次に人事評価制度に着手することに。昇栄では顧客の工場内に出張所を設け出荷作業などを行っているためフォークリフトマンを数多く雇用しているのだが、フォークリフト作業者は管理職を目指すメンバーばかりではなく、スキルアップしても給料が頭打ちになってしまうこともあり、定着率を上げるためにも長く働く社員が昇給できる仕組みの構築が課題だった。
「管理職にならずとも、長く安心して働いてもらえる環境づくりが、人材不足解消には必要でした。日々の荷役作業以外にも頑張ったことをきちんと評価し、昇給につなげていける環境が以前から必要だったのです」。
そこで、外部の専門家と一緒に制度設計をするなかで、kintoneをベースに人事評価のシステム化に向けた取り組みを進めることになったのだが、この人事評価制度を仕組み化する際に、複数のアプリから情報を集計する機能が求められた。
「評価制度のためには、フォークリフトマンをはじめとする現場の作業員やその上長に評価や目標などを入力してもらって、人や拠点、職層ごとに突合したり集約したりしなければならないのですが、そのためにアプリ間のデータ集計機能がないと構築がかなり厳しかった」と山﨑氏。
そんな状況下でkintoneイベントにて登壇者が披露していた、kintoneアプリ間の情報集計や加工に便利なkrewDataに出会ったという。
「krewDataを使えば現場別に複数のアプリを作成しても、任意のデータを取り出して1つのアプリにまとめて集計できることを知ったのです。さまざまな角度から集計した情報をベースに評価できるという観点から、krewDataが人事評価の仕組みづくりに最適なプラグインだと分かったのです」と山﨑氏。
krewData以外にもアプリ間集計が可能なプラグインは存在しているが、データフローを俯瞰したうえでプロセスのなかでデータの抽出や計算、結合が実施できるなど、プラグインとしてメンテナンス性に優れているだけでなく、さまざまな場面に適用できる拡張性の高さを評価した。
「アプリごとに1つずつ設定していくようなものではなく、全体に適用できるような汎用的なプラグインが欲しかった。また、評価制度の設計では、トライ&エラーしながら進めているため、内製化しながら仕組みに落とし込めるのは大きい」と山﨑氏は評価する。
さらにkintoneのデータを可視化するkrewDashboardについても、krewDataを使い始めて数か月後には導入を決断。
「kintone内にデータが蓄積してくれば、その情報を可視化したくなってくるもの。Excelにデータをエクスポートして加工することもできますが、それではリアルタイムでの状況把握はできない。krewDashboardも我々には必要不可欠だったのです」と山﨑氏。
結果としてkintoneの契約をライトコースからプラグインが使えるスタンダードコースに切り替え、アプリ間集計を可能にするkrewDataおよび蓄積されたデータを可視化するkrewDashboardを採用することになる。
【効果】krewDataで使いやすい環境を、krewDashboardで気付きを与える環境を生み出す
■ 目標や評価を入力しやすくして現場の負担を軽減しつつ社員のがんばりを可視化
現在は、物品購入や経費申請といった拠点と本社での書類のやり取りを行うアプリをはじめ、人事評価や勤怠管理、採用管理を含めた人事系のアプリを中心に、請求関連の経理アプリ、出張申請、在庫含めた5000アイテムほどある制服の管理、トラックやフォークリフトなど270台を超える車両を管理するアプリなど、200を超えるkintoneアプリを運用している。PCを中心に業務を行う60名ほどがkintoneを利用しており、フォークリフトマンをはじめ現場で情報を入力する際には、プラグインのFormBridgeを活用している。
人事評価制度については、期初に建てた目標シートとともに、職種ごとに評価項目の異なる職務遂行度評価シートアプリをFormBridge経由で入力してもらい、最終的な人事評価アプリに集約していくフローをkrewDataで作成。入力項目は適宜kViewerにて確認できるようにしている。
「メンバーごとに評価項目が複数あり、それぞれ評価者が分かれてきます。タブ分けしたりフィールド拡張したりすると入力側の負担になるため、シンプルに入力できるようシートを個別に分けて運用しています。krewDataがあるからこその設計です」と山﨑氏は評価する。
■ 車両ごとにかかる経費を算出。保険切れやリース切れなど煩雑な期日管理業務も改善
krewDataおよびkrewDashboardのそのほかの活用例としては、車両ごとにかかる維持管理費を管理して生産性を把握する車両管理のアプリが挙げられる。燃料費や高速代、車検含めた整備費、保険、デジタルタコグラフに関連した費用など、車両を維持するためにはさまざまな費用がかかるが、全て異なる取引先から個別に請求書が届くため車両ごとの経費を算出するには、それぞれを車両ごとに振り分けなければならない。また、車検切れや保険切れ、リース期限などの期日管理も細かく最新情報にアップデートも必要だ。こうした業務もkrewシリーズを活用してkintoneで管理できるようになったという。
まず車両マスター「車台管理台帳」を作成し、車検や保険などの期日管理ができるようにしたうえで、車両別の経費の振り分けは、請求データの明細となるCSVデータをGoogleドライブに取り込み、その情報をkrewDataで取得し、車台管理台帳からETCカード番号など必要な情報を加えてkintoneの車番集計アプリに取り込み、krewDashboardにて可視化できるようにした。
「以前はCSVデータをExcelで加工してkintoneに取り込んでいましたが、今はGoogleドライブにそのままデータ投入することで、krewDataで加工や情報の追加を行っています。投入されたデータは支払処理にも活用しており、大きな業務効率化につながっています」と山﨑氏。実際には毎月40時間ほどの工数削減を実現しており、車番ごとの生産性を見ながらトラックの買い替え時期の見極めや複数社から仕入れている燃料の費用交渉材料などにも活用しているという。
さらに雇用統計アプリでは、スタッフマスターに登録された入退社状況や男女比、所属拠点などの各種情報を月に1回krewDataにて集計を行い、krewDashboardで確認している。このアプリによって、どの程度の期間で退職してしまったのか、年齢などの属性やどの拠点に所属していたのかがはっきり可視化できる。「感覚で語られていた定着率がきちんと分析できるようになり、新たにメンター制度の導入も計画しています。数字を可視化したことでメンター制度に懐疑的だった現場からも、数字を見せることで受け入れてもらえたのではないかと思います」と山﨑氏。実態の可視化によって早期の退職を未然に防ぐことにつながるなど、可視化による効果は大きいという。
■ 人事評価制度の整備で人材不足に悩む物流現場の課題解決につなげる
kintoneによって業務のデジタル化、DX化が強力に推進できていることはもちろん、krewシリーズを新たに活用したからこそ、人事評価制度など新たな仕組みづくりを効率的に実現できているという。現在は、新たにメンター制度導入に向けて環境を整備しているが、将来的なキャリアについて上長と話ができるようになり、仕事に対するモチベーションが上がったという声が現場から寄せられるなど、人事評価制度に手応えを感じている状況だ。
「評価する上長からもチームメンバーの頑張りがデータから見えてくるなど、評価いただいています。メールやExcelだと一方通行だった情報が、今では双方向でコミュニケーションを取ることができ、人材不足に課題のある物流の現場にも良い効果が得られるはず。krewシリーズがあったからこそうまく制度設計したものが仕組みに落とし込めたと考えています。外部のコンサルタントからも驚かれるほどで、システムについてお褒めの言葉をいただけています」と山﨑氏は語る。
krewシリーズについては、単発でプラグインを個別に適用していくより、全体のデータの動きを整理しながら、kintoneのさまざまな活用シーンに適用できる点を高く評価する。なお、独学で環境を整備することに成功した山﨑氏だが、特に学びにつながったのがkrewDataドリルなど充実した学習コンテンツだ。「まだ使いこなせていない機能はたくさんあるため、ユーザー同士で中級者向けの勉強会などを一緒に開いて学びを増やしていきたい」と山﨑氏は意欲的に語る。特にkintoneのコミュニティが充実していることからも、krewのコミュニティを新たに作らずともさまざまなノウハウが得られる点も高く評価する。
■ 現場の業務改善につなげながら、kintoneとkrewシリーズで新たな付加価値を創造したい
現在は会社における働きやすい環境整備を中心に取り組んでいるが、人事評価制度などの展開が落ち着いた段階で、現場の業務改善につながる仕組みづくりに取り組んでいきたいという。
「拠点ごとに荷役作業は微妙に違いがあります。入力者に依存する業務も多いため、使いやすいように個別にアプリを作ってkrewDataで一気に集計、krewDashboardで分析していけるような環境を構築していきたい」。
また、現在でも売上管理はExcelが中心で、拠点から寄せられた情報を月末に集計している。「売上なども日々kintoneに入力してもらい、月末には自動的に集計ができるような環境作りを進めたいですし、これが実現できればデイリーでの売上管理も可能です。数字の管理も全てkintoneに統合していければと思います」と山﨑氏は意欲的だ。
さらに、拠点間の応援スタッフの管理、品質や安全に関するトラブル・事故報告のデータ蓄積と分析や車両維持に関連した取引先とのGoogleドライブ上での直接的なデータの受け渡し、工場の基幹システムデータと連動したロケーション管理システム(商品検索システム)の構築、保有する倉庫の場所貸しといったビジネスに直結する案件管理など、kintoneおよびkrewシリーズで実施していきたいことはまだ山のようにあるという。
「今はExcelで行っているため、拠点間の状況の情報共有が十分ではありません。人員や倉庫の空き状況がそれぞれ把握できるようになれば融通し合うこともできるはず。営業活動にもプラスになるよう新たな付加価値を生み出していきたい」と今後について山﨑氏に語っていただいた。