導入事例
社会保険労務士事務所 めぐみ事務所様
業種:
士業・コンサル業
利用用途:
顧客管理・案件管理
使用製品:
krewSheet
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
士業の顧客管理と案件管理をkintoneで一元化。データの収集と集約に欠かせないkrewSheet
社会保険労務士法人 めぐみ事務所は東北地方トップクラスの社会保険労務士事務所。1995年に仙台市で開業して以来、企業それぞれに最適な労務管理を提案し続けている。2016年に厚生労働省が国家戦略特区内に開設した仙台市雇用労働相談センターでは中核的な役割を果たし、地元の弁護士事務所とともに労使双方の疑問に答える無料相談や労務管理セミナーを積極的に実施するなど、地元企業の労務管理アドバイザーとして欠かせない存在だ。
めぐみ事務所の発展は、紙による業務管理が主流の士業にありながら、いち早くkintoneを基盤とした情報共有とkrewSheetを活用した業務管理の一元化と効率化を実現できたことにも理由があるという。めぐみ事務所の主任 原 和也氏と、めぐみ事務所のkintone導入を支援し、定着化に導いた、ITコンサルタントのスマイルアップ合資会社 熊谷 美威(みのる) 氏にお話を伺った。
【課題】ホワイトボードでの情報管理では、3日以上先の予定がわからない
構造的に情報共有しづらく、紙ベースのデータ管理が主流の士業
社会保険労務士事務所や弁護士事務所など一般的に士業と呼ばれる企業での業務管理は担当者に任されることが多い。めぐみ事務所も同様で、所属する社会保険労務士が自分の受け持つ顧客(企業)の労務管理に全責任を持っている。社会保険や福利厚生の加入手続き、勤怠給与管理といった労務管理はどの企業も法令に従って行うのだが、その資料の保管場所やファイリング方法、案件の進捗管理などの業務管理は社労士各自の流儀で行うため、自分以外の担当者がどの案件に対してどのような活動を行っているのか見えづらかったという。また、公的機関への申請手続きはいまだに紙で行われることも多いため、士業はITによる情報共有やデータ管理が難しい構造の業界であるといえる。
実際、原氏は5年前(2014年)の業務を振り返りこのように述べる。
「私が入社した頃はすべてが紙ベースでした。申請手続きのために印鑑が必要ならその都度お客様のところに出向いていましたし、予定表もホワイトボードで過去3日分の予定を書くといったやり方。社用車の予約も未来3日分しか共有していないので車がバッティングすることがよくあって。とにかく、誰が何をしているのかが全く見えていない。誰かが休んでしまったら書類がどこにファイリングされているのかもわからない。担当者ごとにファイリング方法がバラバラで1つの書類を探すだけで1時間かかるということもありました」
こうした状況に危機感を覚えた原氏は、めぐみ事務所の業務改善に乗り出すことになる。もともとは医療機器メーカーの営業をしていたという原氏。特にITの知識があるわけではなかったが、業務効率と情報共有の観点からITを活用し紙ベースの管理を見直すことにした。
使われないグループウェア
顧客ごとの案件の進捗管理と社労士のスケジュール管理を行うために、あるグループウェアを導入し社内普及を図った原氏。しかし、すぐに社内から不満の声が上がった。
「入力項目がグループウェアの既定項目しかない。任意で項目を増やせない。ページ切り替えが遅く1分もかかる。こうしたことが逆に業務の負担になってしまいました。それで使いにくいという声が高まってしまって。社用車の手配やどの顧客に誰がいつ何をしに行くかといった情報はどうしても共有しなければならないと思っていたので、最初はカレンダーや予定の機能を使って共有したんですがそれもあまりうまく行きませんでした。本当に困っていた時期でしたね。」と原氏。
【導入】カスタマイズが自由なkintoneに魅力。定着化成功のカギは情報整理
士業の業務をkintoneに定着化した実績を持つスマイルアップとの出会い
何かよい仕組みはないものかと探す中、めぐみ事務所に士業向けのITセミナーの案内が届く。まさにピンポイントのテーマだった。そこで紹介されたのが、後にkintone hive 仙台にも登壇することになる辻野社会保険労務士事務所の導入事例である。セミナーの開催者はスマイルアップの熊谷氏。原氏はkintoneのカスタマイズの柔軟性と自分たちでシステムを組むことができるシンプルさにとても惹かれたという。その理由を原氏は次のように述べた。
「独自の社内システムがkintoneなら気軽に作れるというのにすごく惹かれました。グループウェアの導入に失敗したのは従業員から上がってくる要望に対してすぐに対処できなかったことだと思っていたので、どこか(のベンダー)にお願いするわけでもなく、自社で対応できるというのがすごいメリットだと瞬時に感じました」
原氏は早々にスマイルアップにkintone導入の支援を仰いだ。セミナー後、熊谷氏に1日に数回もメールを送ったそうである。めぐみ事務所のIT顧問となった熊谷氏は業務IT化に対してどのような導入アドバイスを行ったのだろうか。
「当時を振り返ると、めぐみ事務所にはITのルールが整っていなかったんですよ。たとえば、フォルダの管理の仕方、保存の仕方、データの文字変換の仕方など。特に社労士業務は個人情報や企業情報を『正確に早くしかも大量に』扱わなければなりません。これをどうITシステムに反映するかというのが本当に重要です」と熊谷氏は力説する。
たとえば、顧客情報の入力揺れを防ぐ工夫として顧客名や会社名の漢字と住所を漢字変換システムの辞書に登録した。最初の3文字を入力するだけで、正確な文字列に変換される。これを事務所内のすべてのPCに設定することで入力環境を均一にした。さらに、資料などのデータを保管しておく共有フォルダは、業務ごとに命名し、すべての顧客に同じ構成のサブフォルダを設置。これにより、担当者でなくとも労務管理手続きに必要な資料がどこにあるのか目星がつくという。前述の通り、士業は顧客の担当者が情報管理に責任を持つが故に独自の業務スタイルになりがちである。熊谷氏は原氏とともに、業務の棚卸しをしながらこうしたITルールを設けることで、人依存だった労務管理業務を組織内に共有化・習慣化する下準備を徹底的に行ったのである。
kintoneが業務基盤のプラットフォームに
段取り八分。この言葉の通りkintoneで案件管理を行うための情報整理を入念に行ったため、めぐみ事務所の案件管理アプリ「みえる案件」の構築はとてもスムーズだったそうである。
「熊谷さんにIT導入の顧問になっていただいて良かったと思ったのは、ただシステムを導入すれば使いこなせるわけではなくて、使いこなすには土台が必要だとわかったことです。それはITに限らずなにか新しい仕組みを入れるときのポイントで、土台を作らずに突然仕組みだけを導入しても何事もうまく行かないんだと思います。」と原氏は言う。
実際にアプリを作成したのはすべて原氏である。スマイルアップが所有している士業向けのテンプレートをもとにしながら、めぐみ事務所に必要な項目を追加したり不要な項目は削除したりして2ヶ月ほどで作成した。
「みえる案件」は顧客に対して行った提案や手続きなどの活動内容と進捗を記録するもの。顧客マスタもkintoneアプリで作成している。顧客マスタ「みえる顧客」には企業名や代表者名、住所、電話番頭といった基本情報のほか、めぐみ事務所からその企業に訪問する場合の1往復の正確な所要時間が登録されている。訪問時に事務所を車で出発し、顧客企業の駐車場に到着するまでの時間に加え、駐車場からオフィスまで何分歩くかまで実測したデータである。これにより、みえる案件アプリに訪問の記録を登録する際に、出かけてから帰ってくるまでの正確な所要時間を入力できるため社労士がどの企業にどのくらいの時間を割いて活動しているのかが可視化されたという。
krewSheetで従業員数4,000人を超える最大顧客の労務管理問題
整理された情報に基づき構築されたkintoneの案件管理システムでめぐみ事務所の業務管理はすべて一元化できたかに思われた。実際8割の顧客の労務管理はkintoneと無料のプラグインを利用することでkintone化できたそうだ。しかし、従業員数が4,000人を超える大口顧客の労務管理だけはどうしてもkintoneに移行することができなかった。
労務管理にはさまざまな定期更新業務がある。例えば、雇用者と被雇用者間で取り交わされる労使協定など。あたり前のことだが、従業員数が多い企業では更新に伴うデータ入力作業も膨大だ。手続きを行う従業員ごとにkintoneの詳細画面を開いてデータを編集・更新することは不可能に近く、データの消し込みや進捗などを視覚化するためにセルや行に色を付けるといったミスを防ぐ運用もできなかったため、大口顧客に限りkintoneの導入後も長年使っていたExcelファイルで業務管理を続けていたのである。
「実はこれがkrewSheetを入れた一番の理由です。大口顧客では月に70〜80人ものの従業員の出入りがあるので手続きが非常に多く、現場の要望でExcel管理を続けていました。本来は、大きい会社さんほどどれくらい作業に時間がかかっているかという集計をしたいのに」。
と原氏は述べ、次のように続けた。
「でも、krewSheetを導入したおかげで、ようやくすべての顧客の案件管理がkintoneでできるようになったんです」。
krewSheetの一覧は、項目(列)の並び順、進捗ごとのセル背景色などを大口顧客の案件で使っていたExcelとほぼ同じ設定にしたという。Excelでは担当者が作業を終えたレコード(行)を手動で着色していたがkrewSheetでは進捗フラグを変更すると自動的に背景色が変わるよう条件付き書式を設定するなど、Excelファイル時代よりも使い勝手を良くしているという。また、複数人で同時に編集できないなどの課題が回避されたこともあり、移行後の評判はとても良いそうだ。
【導入効果】krewSheetがあったからkintoneに顧客管理と案件管理を集約できた
krewSheetがデータの収集と集約に果たす役割
めぐみ事務所において、kintoneは基幹システムとして機能しているが、その文脈の中でkrewSheetが果たした役割について、熊谷氏はこのように考えている。
「根幹となる話ですが、システムとして当てになるということは、一箇所に全てが集まっているということです。収集と集約が一番大事で、めぐみ事務所さんの場合はkintone単体では、大口顧客の情報が積み残されてしまったため、それが難しかった。収集と集約ができるからこそ、効果・成果につながるデータを管理することができるのであって、それが一部しか入っていなければkintoneが基幹業務システムにはなりえない。krewがあってこそできたこと。一般的には効率化という意味の便利さを求めてkrewSheetを導入すると思うんですけれど、根幹の部分の収集と集約をするためにkrewSheetが重要だったと思います」。
原氏もそれを裏付けている。
「kintoneとExcelでデータの二重管理は避けたかったので、大きな会社さんはExcelだけで管理していましたが、やはり大口顧客のデータが抜けていてはkintoneの価値が落ちてしまう。だからどうにかkintoneに(大口顧客の管理も)入れられないかとずっと考えていました。krewSheetは全てをkintoneに集約できるかどうかという目線で導入したのです」
krewSheetを使いこなす人材が拡大中
krewSheetの導入によりすべての顧客と案件をkintoneで一元管理できるようになったことで、システムの価値はさらなる広がりを見せている。経理業務管理への拡大である。それまでは原氏が一人でアプリ開発を担当していたが、krewSheetを導入してから経理部門のスタッフがアプリを作成するようになった。スマイルアップの熊谷氏によると「経理のスタッフにkrewの画面を見せてポイントを教えただけなんですけれど、その後、ひとりでどんどん作り始めて、1ヶ月後に来たらキレイに作り込んだ入金の一覧ができあがっていた」そうである。請求管理や試算表の作成といったミスの許されない集計が多いため、まだ実運用には至っていないが経理スタッフがkintoneとkrewSheetを使いこなせるようになったため、経理業務もkintoneで行えるよう準備を進めているそうだ。
この事例の導入支援パートナー
スマイルアップ合資会社
法人を対象としたITコンサルティングサービスを提供。kintoneの導入実績は80社におよぶ。導入支援を手掛けた企業の98%がkintoneの定着化に成功するなど、徹底的な顧客視点でITを活用した業務改善のノウハウを提案している。