導入事例
株式会社北斗型枠製作所様
業種:製造業
部署:全社
利用用途:案件管理/業務基盤
使用製品:krewData
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
営業から製造、経理に至る一連の業務プロセスをkintone化。
データドリブン経営を目指すモノづくりの現場を支えるkrewData
コンクリート二次製品用の鋼製(こうせい)型枠専門メーカーである株式会社北斗型枠製作所では、kintoneを活用して営業と製造、経理各部署が一体となって業務のデジタル化に取り組んでいる。その業務基盤に欠かせないプラグインとしてkrewDataを活用しているとのことで、その経緯をkintone導入プロジェクトの中核を担っている型枠営業部 次長 渡邉 克史氏にお話を伺った。
【課題】データドリブン経営に向けた環境整備、部署の閉じた仕組みに留まっていた
テトラポットをはじめコンクリートを素材にしたブロックを製造するためには型枠が必要となるが、株式会社北斗型枠製作所は1966年の創業以来、鉄や鋼板で型枠を製造・販売する「コンクリート二次製品用鋼製型枠専門メーカー」として、フルオーダーメイドで鋼製の型枠を提供している。
“型にハマらない” “枠を超える” をキーワードにさまざまな用途の型枠を手掛けており、現場第一主義を徹底することで、発注者はもちろん現場の作業者の声を丁寧に拾い上げ、現場が求める最適な型枠提供に向けて日々営業活動に勤しんでいる。
そんな同社では、案件から見積作成、受注に至るまでの業務がExcelを印刷した紙を中心に行われており営業、製造の各部署の進捗状況が迅速に把握できず、電話や対面で確認しなければならない事案が多発していた。
「事務作業においても二重三重の入力作業が散見され、各部署の担当者の業務負担が大きなものとなっていたのです」と渡邉氏は当時を振り返る。
数字の把握も困難で、例えば当月の受注金額を知るためには、製造指示書をかき集めてきて把握せざるを得ず、製造プロセスを把握するための工程表も現場それぞれで運用していたため、状況を速やかに把握できる状態ではなかったという。
デジタル化やDX推進などが世の中で注目されていることもあり、同社でもデータドリブン経営の実現を目指してシステム化に取り組んでいたのだが、思うような環境整備には至らなかったという。
「見積作成から製造部への指示書までの仕組みをシステム化することで、一部業務をExcelから移行することには成功したのですが、営業部だけの仕組みに留まってしまい、周辺部署への連携が難しい状況だったのです」と渡邉氏は言及する。各部署に案件の情報や要件などのデータを受け渡すものの、部署ごとに閉じた仕組みだったため、それぞれが再度入力せざるを得ないなど、課題の抜本的な解決には至らなかったのだ。
【選定】kintoneとkrewDataの組み合わせが二重入力の排除に絶対条件だった
課題解消につながる環境づくりとして紹介を受けたのが、サイボウズが提供するノーコードでシステムを開発できるクラウドサービスのkintoneとkintoneでの仕組みづくりに欠かせないプラグインのkrewDataだった。
「以前の仕組みは外部委託して開発していたのですが、担当の方が退職してしまったことで思うように手が入れられなくなったのです。システムを改善するには(システム開発者との)迅速なレスポンスが必要になることを改めて認識したので、いずれは内製化できる環境が必要だろうと考えていたのですが、ノーコードツールのkintoneなら自分たちに必要な業務システムを作れそうだと感じたのです」と渡邉氏。
そこで、紹介を受けた企業の伝をたどりkintoneの開発支援を行っているkintone AWARDでグランプリを獲得した矢内 哲氏に自分たちのやりたいことを伝えたところ、二重入力の解消については複数のアプリの情報を集計するためのkrewDataが、数値の可視化によってデータドリブン経営を実現する環境づくりにはkrewDashboardが必要だと提案を受けたという。
「実は、パートナーからの提案段階で、krewDataは当たり前のプラグインとして含まれていました。当時はkintoneの標準機能としてイメージしていたほどで、仕組みづくりには必須のプラグインだったのです」と渡邉氏は説明する。他にも、kintoneでの帳票作成プラグインも必須のものとして含まれていたという。
krewDashboardについては、kintoneに情報が蓄積されてから導入することを前提に、新たな業務基盤としてkintoneとkrewDataの組み合わせが選択されることになったのだ。
【効果】二重入力の撲滅とデータ可視化によるデータドリブン経営の基盤づくりを実現
■ 多くの業務アプリを柔軟に連携させることが可能なkrewData
現在は、8割以上の社員が業務プラットフォームとしてkintoneを活用しており、営業部ではスケジュール管理のプラグインであるKOYOMIから行う日報入力をはじめ、案件管理や見積書・積算書作成、クレーム報告といったさまざまなアプリが運用されている。
そのなかで、日報アプリや積算書アプリなど各部署が入力する情報からデータを集約・集計して様々な視点の業務指標を算出したり、別の業務で必要とされるデータに成形したりするプロセスの多くを担当するのがkrewDataだ。アプリ作成に関しては、渡邉氏が社内の要件ヒアリングし、要望を取りまとめパートナー企業で実装するという協業体制で環境整備を行っている。ただし、全社的な運用が進んだ段階で、できる範囲から自分たちで触っていけるような内製化に舵を切る計画となっている。
具体的なアプリとしては、マスター系のアプリとともに、営業部で活用する工事総額を算出する概算見積アプリや受注案件管理アプリ、製造部へ製造指示するための工番発行アプリなどを構築・運用しているとのこと。
製造部では、製造管理アプリを中心に、仕様書アプリや組み立て管理記録アプリ、製造作業日報などを経由して積算書管理アプリに情報を集約、製造管理にその実績を返すことで積算情報の予実管理を実施しているそうだ。また、納品出荷アプリや請求登録アプリなどもあり、最終的には売上計上のための月次請求管理アプリで仕訳情報を作成し、クラウド会計へ連携させることで経理部までの業務を一気通貫で行っている。
他にも、原材料としての鋼材見積と鋼材発注アプリはプラグインを用いてFAXに連携し、製造管理アプリに紐づいた形でクレーム管理アプリを用意、業績報告会資料の作成のために受注前の客先ヒアリング情報アプリや営業日報アプリなども運用している状況だ。
krewDataについては、製造管理アプリ内で製造部が示した納品出荷予定日をカレンダーに戻す処理をはじめ、マスターとなる取引先台帳や鋼材見積依頼アプリから情報を集約し、鋼材発注FAXアプリにて調達を行う処理などに適用している。また、出荷タイミングで納品書や請求書アプリに納品実績が反映され、納品出荷・請求登録アプリからは売上情報が、積算書からは工番ごとの原価が抽出可能となる。それらをkrewDataで経営管理表に集計し、帳票作成プラグインのレポトンで月次レポートとしてPDF出力している。作業日報などの情報をもとに積算書内に作業実績を日々記録することで予実管理が可能で、最終的な原価が月次の数字に反映される形だ。
「二重入力を防ぐために、アプリ間での集計や加工処理できるkrewDataはとても重宝しています」と渡邉氏。
■ 工数削減に貢献、kintoneによる業務基盤として欠かせないkrewData
kintoneおよびkrewDataで業務基盤を整備したことで、営業部については19時間ほどを要していた報告資料の作成時間を1時間にまで圧縮することに成功しただけでなく、総務部では33時間ほどかかっていた納品書の入力作業を8時間に、製造部では進捗確認作業や日報入力作業などトータルで180時間かかっていた業務を42時間に減らすことができている。
特にデータドリブン経営に向けたデータの可視化については、顧客ごとの売上や原価、共通言語となっている工番単位で工数を作業日報に入力することで、作業者ごとの生産性が把握できる形だ。
「売上をPQ、粗利をMQとしてそれぞれ管理するPQMQ管理アプリも作成しています。顧客ごとの売上や粗利、粗利益率はもちろん、作業者の平均単価などから、お客さまごとに設計や組み立てといった9つに分けた工程別の工数が把握可能です。これらが可視化できることで、見積原価の根拠として利用できますし、見積金額や納期交渉の強力な材料としても役立っています。これらの集計が自動化できているのもkrewDataのおかげ」と渡邉氏は評価する。
営業会議資料についても、krewDataにてデータ集計が自動化でき、最終的にレポトンにてPDF出力するだけで済むため、資料作成の手間が大幅に削減でき、日々の売上状況なども迅速に把握可能だ。
「例えばライバル情報や市場情報、お客さま情報をそれぞれ3つずつ記載するといったルールを設けて営業活動の報告としての日報アプリに日々入力することで、営業会議時に必要なレポート作成の負担は大きく軽減できています」と渡邉氏。日報にさえ入力すれば、あとはkrewDataで情報をレポートアプリに集約するだけで済むわけだ。
なお帳票については、営業会議時に直接デジタル情報として書き込み可能な会議用の個別ソフトウェアを使っているが、一部グラフ化したものをうまく活用するニーズとして、krewDashboardの導入が予定されており、これからデータドリブン経営に向けた情報の可視化をさらに加速させていきたいという。
現状kintoneによる業務基盤において、krewDataは欠かせないものとなっている。
「そもそもkrewDataがないとkintone自体は活用していなかった可能性も。数字の可視化や二重入力をやめるという我々が目指した基盤を実現するには、krewDataがないと実現できなかったと言っても過言ではありません」と渡邉氏。
世の中にkintoneプラグインは数多く存在しているが、その中でkrewDataは主食。まるで日本食における“米”のような位置付けだと力説する。
■ データ活用をさらに加速させるkrewDashboard、必要に応じてkrewSheet活用も
現状は多くの業務がkintoneにてアプリ化されているが、単価表や製造計画にあたる工程表などの作成も、積算書にて蓄積した情報をうまく活用しながら実装していきたいという。その意味では、kintoneに蓄積された情報の活用をさらに加速させていきたいと渡邉氏。
「毎朝売上情報がダッシュボード上で確認できるといった環境はもちろん、現在はExcelで作成している過年度の情報も含んだ年計グラフなども簡単に把握できるようにしたい。この辺りはこれから活用が本格化するkrewDashboardが大いに役立ってくれるはず」と期待を寄せている。
また、工番ごとの工程に誰がどの程度工数をかけているのかが把握できているため、将来的には個人の生産性を加味した、個人評価や人材育成といった人事評価にも活用できると考えている。
将来的にはAIをはじめとした機械学習によって蓄積されたデータを有効活用し、製造の工程管理や売上予測といったさまざまな用途に活用していきたい考えだ。
そして、これからは内製化に向けた取り組みも加速させていく計画となっている。
「私以外にkintone担当者を育成して、できる限り内製化できる部分は進めていきたい。その場合、情報のメンテナンスや入力負担の軽減などに役立つ、Excel感覚で利用できるkrewSheetなどの出番も出てくるでしょう」と今後について渡邉氏に語っていただいた。
この事例の導入支援パートナー
kintone認定 カイゼンマネジメントエキスパート
矢内 哲
kintoneを活用した企業や組織の業務改善、業務設計を支援。