導入事例
阪急阪神不動産株式会社様
業種:不動産業・物品賃貸業
部署:全社
利用用途:物件管理/予実管理
使用製品:krewSheet / krewData / krewDashboard
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
ダッシュボードによる情報の可視化が部門のDX推進を大きく後押し
IT未経験だった現場担当者の強力な武器となるkrewシリーズ
オフィス・商業施設の賃貸、不動産開発などを手掛けている阪急阪神不動産株式会社では、全社的なDX推進の柱として、ローコードツールのkintoneを採用。物件の予実管理など情報の可視化にkrewDashboardを、アプリ間の情報集計などにkrewDataを、情報の円滑なメンテナンスにkrewSheetを活用している。その経緯について、住宅事業本部 ソリューション推進部 戦略統括グループ 川本 樹生氏および経営企画本部 DX推進部 コアITマネジメントグループ 和田 昌弘氏にお話を伺った。
【課題】Excelによる多数の物件情報管理で案件進捗管理や収支把握に時間と手間が必要に
阪急阪神ホールディングスグループの中核会社として、阪急・阪神沿線や大阪梅田エリアでの都市開発事業、分譲マンションをはじめとした住宅事業などを展開している阪急阪神不動産株式会社。オフィス・商業施設の賃貸や不動産開発、エリアマネジメントなどさまざまな不動産事業を手掛けており、近年は沿線開発で培ったノウハウを最大限に活かし、首都圏エリア、また、海外ではアジアを中心に、オーストラリア、アメリカなどへも事業エリアを拡大している。「100年まちを創ってきた、これからの100年も創る」をコンセプトに魅力あふれる沿線づくりや街づくりに貢献している総合不動産デベロッパーである。
同社が手掛ける事業のなかで、分譲マンション・分譲戸建や、仲介、リフォーム・リノベーション、賃貸物件の管理・運用、土地の有効活用のご提案など、住まいに関するサービスを幅広く展開しているのが住宅事業本部だ。この住宅事業本部で仲介、リフォーム・リノベーション、賃貸物件の管理、土地の有効活用のご提案などを展開するソリューション推進部において、部内横連携やバックオフィス業務の統合、生産性向上のために後方支援しているのがソリューション推進部 戦略統括グループだ。
「私は、ソリューション推進部で複数の事業に関わりながらDXを含めた業務改善を一緒に進めています」と同グループ 川本氏は説明する。
中でもまず課題として取り組むことになったのは、仲介グループが手掛ける買取再販事業におけるExcel業務だった。
「事業が拡大していくなかで、Excelでの物件管理や収支管理では負担が大きく、買取再販事業をマネジメントしている上長から相談を受けていたのです」と川本氏は当時を振り返る。
Excelを駆使して多数の物件管理を実施しており、最新情報の把握に時間がかかっていただけでなく、仕入や販売、経理、工事など物件にかかわる担当者それぞれが個別のExcelを用いていたため、情報の更新漏れも懸念されていた。新たな管理指標を追記する際にも、すべてのExcelファイルを更新せざるを得ないなど煩雑を極めていたのだ。
【選定】kintone採用において課題解決にマストな要件だったkrewシリーズ
そこで、業務の効率化を検討する過程で、IT未経験の川本氏でもアプリ作成が可能なローコードツールに注目、最終的にkintoneを選択することになる。
「販売管理のパッケージも検討しましたが、物件にまつわるさまざまな業務への柔軟な展開が難しかった。既存のExcel業務をうまくシステムで吸収できるものとして、汎用的にアプリケーションが作成できるkintoneが最適だと考えたのです」と川本氏。
一方、全社的なDX推進を担っている経営企画本部 DX推進部では、かつてサイボウズデヂエを利用していたことから、その後継としてkintoneを採用、その活用方法を模索していた。
「kintoneの全社展開を進める中で、川本がkintoneを活用した現場の業務改善を検討していることを知り、その取り組みを支援することでkintoneの全社展開に向けたモデルケースとしたいと考えたのです」と和田氏は説明する。
その頃、川本氏のほうは、kintoneだけでは既存のExcel業務を移行することが難しいとITベンダーやサイボウズ社から指摘を受けていた。
「私自身はJavaScriptを扱えないのでkintoneの標準機能だけで既存の業務をそのまま移行するのは難しいと思っていましたが、プラグインを活用すれば、ITに詳しくない私でもなんとかなるのではと考えたのです」。
そこで目をつけたものがメシウスのkrewシリーズだった。「あまり複雑ではないとはいえ、既存のExcelで使われている関数をうまくkintoneに反映できるものが必要でした。また、複数のExcelを見比べないと事業の今が見えないという課題を解決するには、kintone上に集められた情報をkrewDataで集計し、krewDashboardで可視化するのが最適だと考えました。kintone採用の前提として、krewシリーズは必須要件だったのです」と川本氏。
こうして全社的なDX推進の流れと歩調を合わせる形で、Excelに変わる物件管理や収支管理の業務基盤として、kintoneおよびkrewシリーズが選択されることになった。
【効果】全社的なDX推進の一翼を担うkintone、欠かせないkrewシリーズの存在感
■ krewDashboardで管理上必要な情報を可視化、情報メンテナンスや集計処理にも活躍
現在は、ビルマネジメントを手掛けるグループ会社も同じドメインのkintone基盤を利用している状況で、グループ全体としては800名を超える規模で運用。阪神阪急不動産株式会社内では400人ほどがkintoneを活用して業務の効率化や省力化に役立てている。作成しているアプリは900を超える規模となっており、DX推進部からアカウントが付与され、誰でも自由にアプリ作成が可能な環境が整備されている。
「IPアドレス制限にて安全な環境を整備しながら、JavaScriptの使用禁止といった一定のルールを設けて自由に触ってもらっています」と和田氏は説明する。部署やプロジェクトで作成されたスペースは60を超えており、現場の課題解消に向けて多くの社員が利用している状況だ。
川本氏が手掛けた買取再販事業に関しては、物件情報を登録する検討リストアプリをはじめ、物件の進捗を管理する進捗状況管理、マンションや土地に関する収支計算のためのアプリを用意しており、各アプリの情報をkrewDataで集計して見込み物件や引渡し済物件に関する予実管理を行うなど、買取再販事業ダッシュボードとして全ての情報や指標がkrewDashboardで可視化できる環境が整えられている。年度や月ごとの情報数や再販契約数、粗利額推移グラフといった管理上必要な情報をまとめて確認できるダッシュボードとともに、見込み物件や今期物件一覧、粗利などもタブを切り替えるだけで確認可能だ。蓄積されたデータはkrewSheetによりExcelのように表示・編集できるようになっているため、メンテナンスも容易だ。
買取再販事業でさまざまな指標が可視化されたことで、他の事業でもkintoneとkrewが取り入れられている。例えば、仲介事業では広告費に対する売上達成の効果をみるROAS管理のPoCを行っており、基幹システム内の契約データをkintoneに取り込み、krewDataのフローを使ってどの媒体から成約につながったのかを可視化するなど、さまざまな用途にkrewシリーズが活用されている。
「買取再販事業で構築したものが、他事業のデータ活用に横展開できる環境が進みつつあります」と和田氏は説明する。
■ 45%の作業時間削減に貢献、現場に魅力が伝わりやすいkrewDashboardの有用性を評価
kintoneおよびkrewシリーズで物件管理や収支管理の基盤を整備したことで、Excel管理時代に行われていた転記作業や集計にかかる時間が大幅に削減され、月50時間の工数減で45%の作業時間削減を実現している。
「物件数が増加しても、現場の人員やリソースを大きく増やさず、業務が円滑に進行できる環境が整備できました。おそらく従来のExcelベースの管理では難しかったはず」と川本氏は評価します。また、krewDashboardによって業務の進捗やKPIなどの指標が可視化できるようになり、情報がkintoneによって集約されることでExcel管理にありがちな属人化の解消にもつながっているという。
川本氏が現場の業務改善を実践し、その活動をDX推進部が環境づくりを含めて支援していったことで、事業部門と情報システム部門が両輪となってDXを推進するという同社が理想とする形に自然となっていったという。また、買取再販事業での成功事例を社内の勉強会やサイボウズ社のイベントで発表するなど、積極的に情報発信することで次なる業務改善にもつながっているとのこと。「川本を中心に現場がいろいろなkintoneの活用を考えて実践してくれたことで、我々としてもその活動をしっかりフォローしようという流れができました。社内で最初に川本が壁を突破してくれたからこそ、全社的なDX推進につながっています」と和田氏。同社では導入当初の20ライセンスから、わずか1年半の間に約800ライセンスにまで利用者が広がるなど、kintoneでの業務改善の取り組みが全社に広がりつつある。
krewDashboardの魅力については、ダッシュボードを見ることで既存の情報では足りない情報を明確化できる点だと川本氏は言及する。
「ダッシュボードを見ていると、当初可視化した情報をさらに掘り下げたいといった要望が出てきやすい。データを可視化できることで、これまでなかった情報の必要性に気づかせてくれるという意味でとても有用です」。
またkrewDataについては、集計のフローがビジュアルに表現でき、メモが残せることでメンテナンス性も高いなど、事業の継続性の観点からも使い勝手がいいと評価する。全社的なDX推進の観点からは、krewシリーズがあることで現場にも魅力が伝わりやすくなる点を高く評価する。
「データをkintoneに入れてみて、krewDataで掛け合わせてkrewDashboardで確認、足りない情報をさらに追加していくといった改善プロセスが回しやすい。今は過渡期にありますが、データドリブン経営という領域に近づいていくための環境整備にkintoneおよびkrewシリーズが大きく役立っています」と川本氏は高く評価する。
また、kintoneユーザーによるコミュニティが充実していることで、全社的にもツール展開しやすい魅力があるという。「コミュニティの裾野が広いことで、教育コンテンツとしての情報が多く公開されていますし、伴走支援などパートナーのサービスも選択肢が多い。社内の担当者が変わっても継続して使っていけるという視点でも、kintoneおよびkrewシリーズは全社的な基盤として今後も期待しているところです」と和田氏。
■ 社内に展開するエバンジェリストへ、DX推進の強力なツールとしてさらに活用を広げる
買取再販事業に関してExcelで行っていた各種管理業務をkrewDashboardでダッシュボード化することに成功したため、今後は同様のニーズがある他の事業にもうまく横展開していきたいという。
「kintoneにデータを入れるなら、可視化して分析まで行うことがDXの基本だと考えています。その際には、集計のためのkrewDataと可視化のためのkrewDashboardが必要なので、この組み合わせをうまく他事業にも展開していきたい」と川本氏。
また、自身で得た知見を社内に還元していき、各部署に寄り添いながらkintone展開を伴走支援できるような活動にも注力していくなど、エバンジェリストのような役割としての活動を広げていきたいと川本氏は意欲的だ。
「kintoneに関しては、ローコードツールとして現場が求めているものだと考えています。可視化や集計、入力補助に効果的なkrewシリーズをうまく絡めながら、DXをさらに推進させていきたい」と和田氏。
全社的な観点では、ローコードツールとしてのkintone以外にも、DX推進の3本柱であるRPAや生成AIもうまく組み合わせながら、市民開発を現場に浸透させ、現場主導で業務改善できるような環境をさらに整備していきたいと今後について語っていただいた。