導入事例
後藤設備工業株式会社様
業種:建設業
部署:全社
利用用途:工事管理
使用製品:krewSheet / krewData / krewDashboard
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
施工中案件の実績予測が一目でわかる「進行基準」での工事台帳をkintoneとkrewシリーズで実現。難しいとされる建設業の原価管理をノーコードの内製システムで解決
香川県高松市に本社を構える総合設備工事業者の後藤設備工業株式会社では、作業品質や収益、安全面など組織的な管理を徹底させていくためにデジタル化を積極的に推進しており、紙を中心に行っていた業務からいち早く脱却し、業務プラットフォームであるkintoneを採用。また、kintone内に蓄積された情報を可視化することで、施工中工事の実績を進行基準で管理するなど、収集したデータに基づいて判断や意思決定していく経営体制構築にkrewシリーズを活用している。その経緯について、取締役会長 伊藤 雅也氏、管理部主任 片山 由香里氏および同部 出野 佐和氏、工事部課長 井元 政志氏にお話を伺った。
【課題】デジタル化を強力に推進する同社、業界に先んじてkintoneを業務基盤として活用
1941年に水道工事事業を営む企業として創業し、現在は空調や電気も含めた総合設備工事業者として事業を展開する後藤設備工業株式会社。本社を構える香川県を中心とした四国一円で、給排水衛生設備工事や空調設備工事・消火設備工事・電気設備工事などを手掛けている。メンテナンス事業にも力を入れており、竣工後のアフターメンテナンスから一般家庭の水回りやエアコントラブルに24時間体制で対応。さらに、水廻り専門のリフォーム事業に参入するなど常にチャレンジする姿勢を持って安全・品質重視のビジネスを展開している。
現場作業の多い建設業界はデジタル化が進みづらい業種の一つであるが、同社では経営層の強力なリーダーシップのもと、期待に応える現場の実務者が業務のデジタル化を推進。日々の業務改善を通じてシステムを刷新していくなどスピード感に優れたアプローチを積極的に取り入れながら、経営指標の可視化や、業務効率化、安心・安全な品質管理に資する業務基盤の整備を行っている。
「デジタルとは縁遠い工事現場が多い保守的な業界だけに、管理する側は現場の状況や情報に目が行き届きにくいところがありますが、品質と安全は組織として管理・監督していかなければならない。そのためにも、現場に使いやすいデジタル環境を整備すべく、日々改良を重ねながら現場に適した業務基盤づくりを行っています」と説明するのは、同社においてデジタル推進の旗振りを行っている伊藤会長だ。
そんな同社では、かつては紙を中心にExcelやAccessを駆使しながら年間に3,000件ほどの工事やサービスの案件管理と請求書処理も含めた会計までの一連の業務を行っていたが、業務の効率化や対応品質の向上、管理体制の強化を目指し、システムを内製化できる環境として、2010年代の早い段階からサイボウズのkintoneの存在を知り業務基盤として導入した。
「kintoneを使いはじめた当初は顧客の声を集約したサービスカルテや、保有するトラックなどの社用車の使用状況など、担当者が紙やExcelで管理していた業務をkintoneアプリに置き換えて使っていました。Excelの代用といった感じでした」と管理部の片山氏は当時を振り返る。
その後、新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークへと舵を切るなか、さらなる脱Excelやペーパーレスを推進するためのITプロジェクトが立ち上がり、導入済みのkintone活用をさらに進めていくことになったという。
【選定】地元銀行の提案を受け、kintoneをドライブするための起爆剤として注目したkrewシリーズ
そんな折、四国の地場企業の活性化を目指し、積極的なDX支援事業を展開する株式会社百十四銀行が、ICTコンサルティングサービスの一環として、後藤設備工業株式会社の目指す方向性や課題についてヒアリングを実施。同社との打合せを実施する中で、kintoneを施工中の工事案件管理までの活用する構想を確認。更なる成長に向けて、kintone内に蓄積された情報を有効に活用し、経営判断に結びつける環境整備の提案を行ったのだ。
「現状のkintone活用状況や課題感を確認させていただくなかで、売上や原価など数字の情報をより活用できると考えました。工事台帳の高度化も含め、kintoneに蓄積されたデータをもっと活用することによって、同社が長年積み上げてきたビジネスを後押しできると考えたのです」と株式会社百十四銀行 コンサルティング部 上席調査役 松浦 秀昭氏は語る。
その提案のなかで出てきたのが、グレープシティが提供するkrewシリーズだった。
「データ処理が複雑になる場合は、外部のエンジニアにお願いして、プラグインやJavaScriptを駆使してアプリを作り込んでもらっていましたが、krewシリーズがあればアプリ間のデータを加工・集計もできるし、営業活動やお客様の声などを簡単にダッシュボードで可視化して共有できる。わざわざ作り込まなくともkrewシリーズを使う方が簡単で、しかも自分たちでも作っていけることがわかったのです」と伊藤会長は当時を振り返る。現場でkintoneを担当していた片山氏に試用期間のなかで試してもらうことで、十分運用していけると判断。
「krewシリーズはサブスクリプションで活用できるため、もしうまく行かなかったら辞めればいいという考えもあり、導入する決断をしたのです」と伊藤会長。
その結果、株式会社百十四銀行が後押しするDX化支援の新たな環境として、kintone活用をドライブするkrewシリーズを導入することになる。
【効果】週報と受注情報から施工中案件の予実を可視化。kintone活用の幅を広げるkrewシリーズ
■ 工事完成基準と工事進行基準双方で収益認識が可視化できる環境を整備
krewシリーズ導入後に実現した大きなものは、施工中の工事で逐次計上されていく経費と売上を可視化した「進行基準」による実績の把握だ。krew導入前は施工完了時に、すべての工事原価が計上される「完成基準」のみで売上実績を確認していたという。
「以前から工事完成基準では収益を把握できていましたが、施工途中の進捗状況も含めて原価や売上予測を確認したいと考えていました。krewシリーズを導入したことで、現時点での各工事の原価や進捗状況から収益がダッシュボードで把握できるようになっています」と出野氏は説明する。
具体的には、外部で運用している原価管理システムに入力された仕入れや外注費をkintoneの工事決定伝票アプリに取り込む。各現場で発生した労務費などは工事部門の週報の情報から算出し案件ごとの原価をkrewDataにて集計。工事予算や担当者別の月間の売上・粗利目標はkintoneアプリとして登録しており、工事決定伝票アプリ内では実行予算の入力を行い、予算と目標とともに、原価実績のデータをkrewDataにて集計。その結果は、工事集計一覧アプリに集約している。データはkrewSheetで一覧表示したり、krewDashboardでグラフとして可視化したりしている。
■ krewDataでの自動集計が業務効率化に大きく貢献
krewシリーズを導入したことで、原価管理システムのデータと週報アプリから最新の原価情報が自動反映されるようになったと片山氏は評価する。
「krewの導入前は、週報の集計・加工が手作業だったため月次の役員会のタイミングでしか実績の報告ができませんでしたが、krewDataが自動的に集計してくれるので、いつでも最新情報をkintoneで提示できます。会議でも常に新しい情報で議論できるようになったのは大きい」。
以前は役員会の直前に週報が提出されることもあり、慌ただしく集計作業を行うことも少なくなかったが、今は集計業務そのものが削減され、他の業務に時間を割けるようになった。未提出の場合もすぐに可視化できるため、情報提出の催促もしやすくなっているという。
またkrewシリーズによって、任意のタイミングで現時点での実績と施工完了時の予測が自動集計され、krewDashboardでシンプルに可視化できるようになったことで経営的にも素早い対策が検討できるようになったのは大きいという。
現在は、工事管理以外にもお客さまサービス活動に関連したアプリとともに、営業活動や、施工時に必要なトラックや器具の管理、顧客管理、安全管理など、kintoneにて各種アプリを作成しており、その数は70ほど。
「色々な業務で現在の状況を全員で共有できるため、単に“頑張れ”というだけでなく、数字をベースに次の打ち手を議論していけることが何より大きい」と伊藤会長の評価も高い。特にデータを溜めることで、これまでできなかったこと、気付けなかったことがわかるという点でも、kintoneをベースにした業務基盤は大きな効果になっていると言及する。
「業績だけでなく、例えば現場にクレームが寄せられてもすぐに報告をあげて社内展開できますし、蓄積された情報から改善の打ち手も検討できる。お客さまサービスの品質向上と再発防止にも役立っています」と伊藤会長。
工事部の井元氏もkrewDashboardによる可視化の効能を高く評価する。「Excelで示された数字を見るよりも、きちんとグラフ化されたものを共有するほうが伝わりやすいのは間違いありません。kintoneについても、自身が出すべき情報の提出状況などが手元で常に確認でき、現場に出ていても仕事が進めやすくなっています」。
kintoneおよびkrewシリーズによって、自身の業務効率化を実感しているのは出野氏だ。
「自分の業務が効率化するようにアプリを作ることができるので、だいぶ楽になっています。進行している工事の書類作成や注文書のチェックなどExcelを駆使していた業務をkrewSheet上に移行し、納期遅れなどを色分けして表示するなどチェックも楽になりました」と評価する。
■ Excelと同等の関数をそのまま活用、使い勝手の高さを評価
krewシリーズの使い勝手については「Excel同等の関数が活用できるため、krewDataでデータ処理を行うときの計算式もExcel関数を調べればだいだい答えが出てきます。汎用的な関数を使うことができてとても楽でした」とアプリ制作を担当している出野氏は評価する。また、自らkrewDashboardを使いこなしさまざまなダッシュボードを作成するという伊藤会長は「krewDashboardで画面を作ってもExcelのようにデータが壊れることはないので、触りながら色々な切り口で数字を見ることができます。そこで新たな気づきが得られて次の展開を考えられることが大きなメリットです」と高く評価する。
今回krewシリーズの活用含めた提案を行った株式会社百十四銀行については、kintone活用をドライブさせることにつながったと評価が高い。
「krewシリーズを提案いただいたおかげで、kintone活用の飛躍的な向上につながりました。我々はIT専門の人材ではないため、どういう組み方をしたら最適なのかが分からずに進めていた部分もあり、最初から当社のビジネスモデルや課題を理解している人に支援いただけたことが大事だと今回改めて実感しました」とその支援を高く評価する。
■ さらなる脱Excelや協力会社との共通プラットフォームへと進化させたい
今後については、いまだにExcelで行っている業務もあるため、可能な限りkintoneおよびkrewシリーズに取り込んでいきたいという。
「各工事における実行予算書の詳細については、一部Excelで行っている部分が残っています。以前から使っている現場ごとのExcelによる集計表がkintoneに取り込みにくいため、うまく調整して何とか取り込んでいきたい。また、現在は社内だけでの活用ですが、協力会社などとの情報共有基盤としてゲストスペースをうまく活用していきたい」と伊藤会長は期待を寄せている。
特に施工管理の部分で協力会社とうまく連携しながら、最終的に請求処理にまでつなげていきたいと意欲的だ。
現在は出野氏を中心にアプリの開発を実施しているが、複数のメンバーが扱えるよう組織的な体制づくりを進めていきたいという。
「できるメンバーを増やしていくことで、安定してアプリが開発していけるはず。特にkrewDataは一度作成したら日々情報が更新されるため触れる頻度が少ない部分も。改めて項目を追加したりする際に記憶を呼び覚ますことから始める必要があります。誰かと共有できれば、すぐに活用できる場面も増えることでしょう」と出野氏に今後について語っていただいた。
この事例の導入提案
この事例の構築
smooth株式会社
「ローカルビジネスをスムーズに」をミッションに掲げ、「SaaSを使ってビジネスをスマートに成長させるDXアドバイザー」となるため、様々なサービスを展開するICTコンサルティング企業。